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セリエA 8年前

セリエA初昇格を遂げたクロトーネの風変わりなビジネスモデル。若手の“下積み”に徹するブレない哲学

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

平均年齢は25歳以下。骨格は変わるも哲学は変わらず

ウルシーノ
クラブの哲学を貫くジュセッペ・ウルシーノSD【写真:Getty Images】

 昨シーズンのチームも、そんなコンセプトのもとで作られていたのだ。主力はローマからレンタルしたスキルの高いチャンスメーカーのフェデリコ・リッチ、ザンクト・パウリから借りた巨漢FWアンテ・ブディミール、インテルの下部組織出身で広い守備範囲を誇るDFギー・エロージュ・コフィ・ヤオらだ。

 こうして整備された平均年齢25歳以下の戦力を、かつてガスペリーニのもとで選手、助監督として貢献したイバン・ユリッチ監督がまとめた。師匠と同様の3-4-3で組織されたチームは攻撃力と安定感を発揮し、シーズン前半戦で首位に立つとそのまま昇格へひた走った。

 ただ今季、チームの骨格は大きく変わる。ユリッチ監督が、退団したガスペリーニの後釜としてジェノアに引き抜かれたのだ。もちろん、契約上レンタルバックされた主力も多い。

 しかしウルシーノSDは「我々はそういうクラブ。若手にとってクロトーネで1年で腕を磨くことは、その後のキャリアに役立つことだろう」と立ち位置を崩さない。現在はブディミールやヤオの再レンタルを画策し、その他の補強もやはり若手に的を絞っているという。

 古代ギリシャの時代、クロトーネは「クロトン」と呼ばれていた。古代オリンピックでは強豪の都市国家として名を馳せ、当時のスター選手として文献にも名が残る伝説のレスラー「クロトンのミロン」はここの出身であった。オリンピックの年に昇格したクロトーネが、カルチョの世界で新たな才能を発掘することができるのか注目したい。

(文:神尾光臣)

【了】

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