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日本代表 8年前

オーバーエイジという諸刃の剣。五輪経験者の助言。過去の代表チームに学ぶ手倉森J

text by 藤江直人 photo by Getty Images

すでに一体感のあるチームに加わる難しさ

手倉森誠監督(左)とU-23日本代表でキャプテンをつとめてきた遠藤航(右)
手倉森誠監督(左)とU-23日本代表でキャプテンをつとめてきた遠藤航(右)【写真:Getty Images】

 おのずと育まれた強い絆は、最後のアピールの舞台となった6月29日のU-23南アフリカ代表との国際親善試合で具現化されている。0-0で迎えた前半37分。相手ゴール前に抜け出した大島は、自らもシュートを打てる状況ながら、左側をフォローしてきたMF中島翔哉(FC東京)へ横パスを出している。

 4月下旬に右ひざのじん帯を痛めて長期離脱を強いられ、五輪代表入りへの当落線上にいた中島の先制点をアシストした場面を、大島はこんな言葉とともに振り返っている。

「翔哉にゴールしてほしかったので」

 悔しさを共有しながら必死にはい上がり、リオデジャネイロ切符を手にしたからこそ一緒の舞台に立ちたい。揺るぎない一体感に支えられたチームワークと、23歳以下の選手を最大で3人追いやるオーバーエイジは、ややもすれば相いれない関係になる危険性をはらんでいたといっていい。

 だからこそ3人は「チームの雰囲気を壊さないようにやっていこう」と誓い合ったのだろう。そのうえで藤春は井手口を介して「いじられキャラ」作戦を展開していく。他の2人はどうか。サンフレッチェでは若手のよき兄貴分として、食事会なども開催している27歳の塩谷は言う。

「こちらのほうから、どんどんコミュニケーションをとっていきたい。こちらが年上なのでみんな遠慮するかもしれないので、そこは自分から積極的に声かけをできたらと思っている」

 開幕直前の31日に現地ブラジルで誕生日を迎え、これまでに10人を数えるオーバーエイジ選手のなかで初めて30歳で本大会に臨む興梠に対しては、今シーズンからレッズでチームメイトになった遠藤が「意外でしたね」とこう語っている。

「普段は性格的にすごく穏やかな人で、あまりオラオラしていない感じなので」

 遠藤はオーバーエイジの3人を携帯電話の無料通話アプリ「LINE」のグループに加え、コミュニケーションを深めていくきっかけにしたいと語っていたが、そうした気遣いも杞憂に終わりそうだ。

 関西人らしく「お笑い」を取りながらなじんでいく藤春。J2の水戸ホーリーホックからはいあがってきた苦労人の塩谷の背中は、強敵と対峙するリオデジャネイロの舞台でも頼もしく映る。

 そして、手倉森誠監督をして「しなやかさと野性味を繰り返し発揮し続けられるタフさがある」と言わしめる興梠の控えめで、謙虚な人柄。だからこそ鹿島アントラーズから移籍した2013シーズンもすぐに新天地に順応し、現時点における自己最多の13ゴールをあげているのだろう。

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