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「正当ではない結果など欲しくもない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Shinichiro Ema, Getty Images

ポゼッションは、すべての選手に参加意識を持たせる

――バルセロナの名フィジカルコーチとして知られるパコ・セイルーロは、「20回パスを回せば、ゴールが決まらなくても価値がある。10選手がボールとともに楽しんだのだから」と発言していました。

P 全面的に同意できるね。20回パスを回すということは、全員がプレーに参加したということを意味する。ポゼッションはボールを転がすだけでなく、すべての選手に参加意識を持たせるということなんだ。

――縦に早い攻撃も行うルイス・エンリケのバルセロナより、あなたのラージョの方がバルセロナらしいようにも映ります。

P バルセロナがそこまで大きく変化したとは思わない。彼らの素晴らしさはプレースタイルのベースがしっかりと根付き、チームと哲学を通わせる監督が率いるところにあるからね。ただ、もし過去のチームと異なる部分があるとすれば、それはボールを持っていないときのプレーにある。

 グアルディオラのバルセロナはカウンターを使わなかったし、前線から死にもの狂いでプレッシングを仕掛けていた。だが、あのチームに所属する選手たちは、グアルディオラの頃とはまた違う状態にあるんだ。それは人生の掟であり、現在のバルセロナがグアルディオラ時代のようなパフォーマンスを披露することは不可能に近い。グアルディオラはもうおらず、選手たちだってかつてのレベルにはないからね。

――質の高い選手たちを擁するバルセロナやマドリーに嫉妬など感じたりしますか?

P 健全な形ではあるが、感じるね。だが私の選手たちも、グアルディオラのような監督から指導を受けられないことを残念に思っているはずだ(笑)。

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