フットボールチャンネル

日本代表 8年前

ジーコJ、「序列主義」がもたらした弊害。「海外組」と「国内組」の分化。実力主義の破綻【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

「自分たちのサッカー」という曖昧さ

2006年W杯、初戦のオーストラリア戦に臨んだスターティングイレブン
2006年W杯、第二戦のクロアチア戦に臨んだスターティングイレブン【写真:Getty Images】

 ドイツワールドカップは緒戦のオーストラリアに最後の8分間で3失点して1-3、クロアチアに0-0、2点差勝利がマストだったブラジル戦は先制しながら1-4。いくつか不運なところもあったが、チーム作りが破綻した結果といっていい。

 まず、ジーコ監督は日本選手の実力を過大評価していたと思う。強力な個の組み合わせでチーム力の最大値を出すという方式はチャンピオンチームに相応しいもので、チーム力を積み上げる、あるいは相手の力をそぎ落とす必要のある立場の日本には合っていない。熟成するはずのコンビネーションは深まらず、話し合いでディテールを詰めていく方式も機能しなかった。

 もともとベースがはっきりしている強豪国ならともかく、選手の話し合いで意思統一しながらベースを構築するには時間がなさすぎたのだ。実力競争が伴わない序列主義もチームの一体感を損ねた。

 初期の鹿島アントラーズでは“監督”として細部を決めて徹底させたジーコだったが、代表監督としては正反対の手法を採った。監督の指示より選手の話し合い、トップダウンでなくボトムアップ、世界標準ではなく自分たちのサッカー。そうでなくては本当に強いチームにはならないと考えたのだろう。

 ジーコ監督から代表強化方針の流れが変わっている。「自分たちのサッカー」という曖昧さは、その後の代表にも受け継がれていくわけだが、その最初の結果は苦いものだった。

(文:西部謙司)

【了】

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top