オシムJの戦術的先進性。「日本サッカーの日本化」。可変システムとアジア仕様の使い分け【西部の4-4-2戦術アナライズ】

2016年09月14日(Wed)10時19分配信

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ
text by 西部謙司 photo Getty Images
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練習は設問の連続。「正解」を与えない

 オシム監督はトルシエ方式と違って「正解」は与えない。練習はいわば設問の連続だった。問い詰めるように状況を設定して、選手に考えることを強要した。自分たちで答えを出しなさいというところはジーコと似ているが、考えなければいけない状況を作って強制的に考えさせている。

 例えば、就任緒戦のトリニダード・トバゴ戦ではメンバーだけ発表してフォーメーションもポジションも指示しなかった。練習段階でそれなりの準備はしていたしヒントも与えていたが、決定は選手に委ねている。自分たちで考えなさいと言うだけでなく、考えられるような訓練をするのがオシム流だった。

 ちなみに、オシム監督はマルセロ・ビエルサ監督とよく似ていると思う。マンツーマンの厳しい守備、切り替えの速さ、多大な運動量とインテンシティ……格上のチームに対しても攻撃的な姿勢を変えず、ときどき強豪を圧倒して勝つ。守ってしのいでのジャイアントキリングではなく、圧倒して勝ってしまう。そういう希有な特徴を持つフットボールだ。

 ただ、練習方法は正反対。ビエルサはドリル方式、いわば正解を先に出してしまうトルシエと同じやり方だが、オシムは正解を出す過程を重視する。ところが、やり方は正反対なのに出来上がったチームは非常によく似ていた。

 オシム監督は2007年アジアカップでベスト4の後、12月に脳梗塞を発症して退任してしまった。アジアカップは同等ないし格下の相手にいかに勝つかを問われる大会だが、ワールドカップは格上をいかに食うかが焦点になる。オシム監督が得意としていたのは後者のほうなので、本領発揮の前に退任となったのは残念だった。

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