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日豪戦はオーストラリア優位か。「ジョーカー」としてベンチに控える“天敵”ケーヒル

text by 植松久隆 photo by Getty Images

まさに千両役者。「ジョーカー」ケーヒル

 もっとも興味深いのは、ユリッチのワントップ起用。初戦のイラク戦では2トップの一角、さらに厳しい戦いとなるUAE戦でもワントップに起用してきたのは、ポスタコグルー監督の彼への期待の表れ。さらに今後もケーヒルを「ジョーカー」として起用するという強い意思を感じた。

 試合は、やはり気候面の影響から、豪州は全体的に動きが重い感じがあった。その中でも、一人だけ運動量の質・量ともに違ったのがミリガン。現在、アブダビ近郊のバニーヤスでプレーする彼は、この暑さにも慣れており、まったくその影響が見えないほどピッチ上で動き回った。

 それでも豪州はポゼッションで圧倒。ムーイの強烈なボレーがゴールポストを叩くなど、決定的なチャンスを幾つも作りながらなかなかゴールを割れない。そのような状況下で、大きな意味を持ったのがベンチに控える「ジョーカー」の存在。試合を見守る誰もが、いつそのカードが切られるのかに注目していた。千両役者にとっては願ったりかなったりの展開だった。

 迎えた71分、満を持してケーヒルが投入される。そのファーストタッチで左SBスミスからの絶妙なクロスに合わせ、値千金のゴールを決めた。まさに千両役者の面目躍如で、試合を決めた。

 豪州にとってこの2試合での収穫は、ここまで触れたケーヒルの起用法とミリガンというユーティリティプレーヤーの戦術的有効性の高さを改めて認識できたことだ。

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