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Jリーグ 8年前

浦和・西川とG大阪・東口、東西の日本代表GKが語るルヴァン杯決勝3つの分岐点

text by 舩木渉 photo by Getty Images

素晴らしいコースにPKを沈めた浦和の選手たち

 G大阪の1人目、藤本淳吾はゴール右下に蹴って成功。2人目の今野泰幸が、西川の読み通り真ん中に蹴ってきた。ここで3人目以降のキッカーが真ん中に蹴らないと確信し、相手が蹴る瞬間までしっかりと見極めて飛ぶ方向を決めるようにしたことが4人目でのPKストップにつながった。

 もしこれまで通りある程度予測を立てた上でサイドに飛び続けていれば、コースが甘くなって真ん中に入ってきた呉屋のPKを止められていなかったかもしれない。

 東口にとっては難しいPK戦だった。新ルールによる警告について「できるだけ我慢して飛ぼうというのは最初から決めていたので、何ら問題はなかった」と述べたが、何度かギリギリまで待ったことで飛びきれていない場面もあった。

「サイドネット(にくるPK)はしょうがないので、コースが甘くなったのを取れるようにできるだけ我慢して、真ん中に蹴ってくる選手もいますし、そこで取れるようにやっていました。なかなかそんなルーズボールはこなかったですけど…」

 その通り、浦和の選手は全員素晴らしいコースにPKを蹴っていた。1人目の阿部勇樹と2人目のズラタンは左下に速いボールを突き刺し、同じ方向に飛んでいた東口の反応を上回った。3人目の興梠慎三は巧みにGKのタイミングを外し、4人目の李忠成と5人目の遠藤航はどんなGKでも触るのすら難しいサイドネットの奥へ強いシュートを蹴った。東口が「しょうがない」と捨てていたところだ。

 相手の蹴るコースによって自分がどう動くかデータに基づいてきっちりと戦略を立てていた西川と、警告によって動きを制限されながら熟練のPKキッカーたちに立ち向かっていった東口。一見すると簡単そうに見えるPKの奥深さと難しさを示したハイレベルな争いだった。

 今回はPK戦の末タイトルを譲った東口は「(西川は)ライバルですし、越えていかなければいけない存在ではありますけど、結局自分がいいプレーをしないとその舞台(日本代表)には立てない」と語る。両者の間にあるのはほんの少しの差でしかない。今回は西川が上回っただけであり、2人の競争はJリーグだけでなく、日本代表でも続いていく。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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