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クロップ・リバプール、“真のキーマン”。「速守速攻」のスタイル支えるフィルミーノの献身性

text by 舩木渉 photo by Getty Images

戦術的なキーマンとなっているロベルト・フィルミーノ

フィルミーノ
1トップでリバプールの攻守を支えるロベルト・フィルミーノ【写真:Getty Images】

 このチームにおける戦術的なキーマンは中盤の底でバランスをとるジョーダン・ヘンダーソンや、バイタルエリアで決定的な仕事をするフィリッペ・コウチーニョと思われがちだが、真のキーマンはロベルト・フィルミーノに他ならない。

 本来1トップで起用されるようなタイプではなく、ホッフェンハイム時代は2列目を主戦場にするアタッカーだった。ダニエル・スターリッジやディボック・オリギのような純然たるストライカーではない。

 だが、スターリッジやオリギにできないことをフィルミーノはできる。それは戦術的な動きだ。リバプールの生命線は奪われたボールをいかに早く取り返して攻撃に転じるか、という数秒間の戦いにあるが、彼はその重要性を十二分に理解し忠実に求められた働きを遂行する。

 現在のリバプールではボールを失った瞬間に頭と体を切り替えてプレッシングに移り、的確なポジショニングと適切なタイミングで相手の動きを封じなければならない。スターリッジとオリギは良くも悪くもストライカーであり、自分が点を取るための動きはこなすが、チームのための利他的かつコレクティブな動きは苦手としている。

 クリスタル・パレス戦の直前、ミッドウィークに行われたリーグ杯のトッテナム戦でスターリッジとオリギはチャンスを得て、前者は2得点という結果も残した。それでもチームを見渡すと前線の献身性の低さから全体の展開が緩慢になり、いつものリバプールの迫力はなかった。

 だが、フィルミーノが入ると守備時に前線から相手に強烈な圧力をかけられるため、ボールを奪い返す位置が自然と高くなり、速攻の破壊力も格段に上がる。ただペナルティエリア内でボールを待つだけのストライカーでないのは明らかだ。

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