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原口元気、欧州トップ仕様への進化。他競技に学んだフィジカル論とメンタルの確かな成長【海外組の真価~日本人選手の現在地】

text by 元川悦子 photo by Getty Images , Etsuko Motokawa

「止まる力」という武器。元ハードル選手のもとフィジカルを強化

原口元気
浦和レッズ時代の原口元気【写真:Getty Images】

 もともと原口が「向上心の塊」であることは浦和レッズ時代から知られていた。上昇志向が強すぎるあまり、チームメートとトラブルを起こすことさえあった。しかし、2014年夏にドイツに渡ってから高い壁にぶつかったことで原点回帰の必要性を実感。イチから自分自身を鍛え直したと語る。

「1年目のシーズンの2月までヘルタは(ヨス・)ルフカイ監督が率いていたんですけど、ほとんど試合に出られなかった。その間の自分は割り切ってフィジカルトレーニングしてました。ドイツではサイドの選手が走れることは大前提で、50~60mをスプリントしてから1対1で相手と張り合うのが日常茶飯事。そのうえでハードな守備も求められる。移籍当初は戸惑って自信を失っていたところがありましたけど、フィジカル強化に励んだことで徐々に余裕が出てきました」

 走力アップに意欲を燃やす息子を父・一さんもサポートしようと2014年末、110mハードルの元日本記録保持者である筑波大学の谷川聡准教授と引き合わせる場を作った。

 一さんは「谷川先生は元気の足首の固さに着目し、『彼なら地面の反発力をそのまま利用してスプリント力を上げられる』と太鼓判を押してくれました。そして『止まる』練習から始めたのです。スピードのある選手は止まる時に足首にもの凄い負荷がかかる。だけど元気はもともと強いから問題なかった。陸上をやっている筑波大の大学院生も『僕らは全然止まれないけど、原口選手は止まる力が凄く高い』と口を揃えていました。止まる力を引き上げることが結果的にスプリント力を上げるという理論は、実に斬新なものでした」と言う。

 原口本人も「世界のトップ選手は止まる技術が高い。だからこそ、メリハリの利いたプレーができる」と谷川准教授の考え方に賛同。2015年から2年がかりで片足で止まる、あるいは体幹を根本的に鍛えるといった地道なトレーニングをヘルタの全体練習に並行して繰り返したという。

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