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Jリーグ 7年前

横浜Fは「舐められていた」。だから消滅した。サポーターグループのリーダーが知る真相【フリューゲルスの悲劇:20年目の真実】

シリーズ:フリューゲルスの悲劇:20年目の真実 text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya, Getty Images

「浦和や鹿島だったら、こういうことにはならなかった」

横浜フリューゲルスと横浜マリノスが合併した当時Jリーグチェアマンを務めていた川淵三郎氏
横浜フリューゲルスと横浜マリノスが合併した当時Jリーグチェアマンを務めていた川淵三郎氏【写真:Getty Images】

 とりあえず6時まで待って、それからある球団職員に電話しました。「いったいどういうこと?」って聞いたら、「新聞に書いてあるとおり、マリノスと合併します」。「じゃあ、新しい名前は?」「F・マリノスです」──。あの時点で、すでに『横浜F・マリノス』になることが決まっていたんですよね。

 朝7時にもなると、あちこちから電話がかかりまくりでしたよ。私、けっこう顔が広くて、他サポからも「環、いったいどうなってるの?!」とか電話がかかってきて、「こっちが聞きたいよ!」って感じでしたけど(苦笑)。

 その日の夜に新横浜の全日空スポーツで、登録サポーターズクラブの代表者向けの説明会があるというので行ってきました。集まったのは30人くらいでしたかね。けっこういきり立っている人もいましたけど、私はわりと冷静でした。

 社長が言うには、佐藤工業が業績不振でスポンサーから離れると。全日空だけでは支えきれないので、新たなパートナーを探したんだけど見つからなかったと。Jリーグに相談したら、日産さんも大変みたいだから一緒になったらどうだと提案されたと。「(合併は)決まったことだから仕方がない」みたいな言い方だったんですけど、こっちにしてみれば「はあ?」って感じでしたよ。

 結局、この人に何を言っても仕方がないことがわかったので、何人かでJリーグに行って川淵(三郎)チェアマンに直談判することにしたんです。マリノスのサポーター有志も、一緒に行きました。合併に納得できないという意見の人は、マリノスの側にもけっこういたんです。

 チェアマンは会ってくれました。とりあえず、合併を撤回してくださいという嘆願書を直接渡したんですけど、会うなり涙ぽろぽろで。そしたら、何て言ったと思います?

「正直、これほど大事になるとは思わなかった。これが浦和や鹿島だったら、こういうことにはならなかった」──。

 要するに、レッズやアントラーズは荒っぽいサポーターが多いから、ということなんです。またしても「はあ?」ですよ。

 ASA AZULでは、他のサポーターとは絶対にケンカしないように、私が徹底指導していたんです。ケンカになったら、球団にも他のお客さんにも迷惑がかかるから。もちろん、細かいいざこざはあったけど、それでもフリューゲルスのサポは品行方正なイメージを保っていたわけですよ。

 そしたら、「あいつらは大人しいからマリノスとくっついてくれるだろう」って、結局は舐められていたんですよね。だったら暴れておけばよかったって(苦笑)、ちょっと後悔しています。

後編につづく。文中敬称略>

(取材・文:宇都宮徹壱)

【了】

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