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レスターが回帰した「ファイトボール」。相手にフットボールをさせない岡崎慎司の存在【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

セビージャ“2枚看板”の失策。レスターの理想的な勝利

レスター
レスターはCL初出場でクラブ史上初のベスト8進出を決めた【写真:Getty Images】

 2-0となって自陣に立て籠もるレスター。セビージャは包囲戦からクロスを合わせようとするが、ターゲットのイボーラには届かない。かつてのハイクロス王国は、当然それに対する守備が強い。球際で足を差し込んでいく強さ、クロスをぎりぎりで阻止するブロック……レスターが粘る。

 63分に疲労した岡崎がイスラム・スリマニと代わる。ファイトボールはおよそ60分で消耗する。岡崎の交代は象徴的で、ここからがレスターの正念場だった。

 セビージャの圧倒的な攻勢が続く中、致命的な出来事が起こる。サミル・ナスリがジェイミー・ヴァーディーの挑発にり、互いに額をぶつけ合う。するとヴァーディーが大げさにのけぞり、両者にイエローカードが示された。

 これが2枚目だったナスリは退場に。セビージャは攻撃の中枢を失った。この状態で、インスピレーション部門を一手に引き受けるナスリの退場は痛恨である。

 ただ、もう一度セビージャにチャンスが巡ってくる。ビトーロが裏へ抜け出してファウルされPKを得た。すでに10人とはいえ、これを決めれば延長へ持ち込める可能性があった。

 ところが、エンゾンジのシュートはカスパー・シュマイケルに読み切られてストップされる。牽引車だったナスリとエンゾンジのミスは、セビージャの日でないことを表していた。そしてサンパオリ監督も退席処分。終盤にセビージャのガス欠から、レスターが3回の決定機を作り、すべて外す。

 合計スコアは3-2のまま。ファイトボールでペースをつかんでいるうちに必要だった先制点を前半にとり、後半を耐え抜いたレスターの理想的な勝利となった。

(文:西部謙司)

【了】

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