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レスターが回帰した「ファイトボール」。相手にフットボールをさせない岡崎慎司の存在【西部の目】

プレミアリーグを制したレスターが戻ってきた。14日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦の2ndレグ。アウェイでの1stレグを落としていたレスターは、もはや時代遅れとも言われるような戦術を採用してセビージャを迎え撃った。自陣に築かれた強固な砦は稀代の戦術家ホルヘ・サンパオリでも落とせず。成し遂げんとした志をただ一度の敗北によって捨ててはいけない、という決意が勝利を呼び込んだ。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

レスターが仕掛けた“現代版”ファイトボール

テリー・ヴェナブルズ
かつてイングランド代表やバルセロナなどを率いたテリー・ヴェナブルズ氏は「フットボール」の変化を指摘した【写真:Getty Images】

 かつてウェンブリースタジアムのロッカールームで、アウェイチームは青ざめていたという。ここでの試合では、背後からのタックルとGKへのチャージが黙認されていたからだそうだ。絶え間ないプレッシャー、(他国からみれば)乱暴なタックル、ハイクロスの雨……ある著名な英国人記者はイングランドのプレーを「ファイトボール」と評した。

 ファイトボールに関して、イングランドは世界一だった。ただ、ゲームがフットボールにスローダウンするとそうではない。イングランド代表監督だったテリー・ヴェナブルズが、相手がイングランドの勢いを「そぎ落とす」ことにすっかり慣れてしまったと指摘していたのは1990年代である。

 レスターがセビージャに挑んだのは現代版の「ファイトボール」だ。

 絶え間なく相手ボールにプレッシャーをかけ、奪いとったら手間をかけずに攻める。奪った場所が自陣ならロングボールを使って前進、ロストしても再びプレス。球際は激しく、執拗。ゲームのテンポを上げ続けた。

 プレミアリーグを制したレスターが戻ってきた。クラウディオ・ラニエリ解任とともに自らの、そしてイングランド・フットボールの原点に回帰した。

 逆にいえば、セビージャはゲームをフットボールに着地させることに失敗している。ボールを空中ではなく地面に転がし、正確なパスワークでプレスを回避し、テンポを落とす。少なくとも前半はそれがうまくできなかった。

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