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吉田麻也、黒子に徹する“統率力”。サウサンプトンのDFリーダー、プレミア5年目の覚悟か【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

目立つことのない吉田の統率力

スティーブンス
吉田とCBコンビを組むジャック・スティーヴンズ【写真:Getty Images】

 サウサンプトン入団の一年目にリーグ戦で32試合に起用された吉田麻也だが、翌シーズンは故障もあって8試合に激減、続く2014/15には22試合と持ち直したものの、この頃からどちらかと言えばセカンドレギュラーにシフトダウンされていたきらいがあった。慣れないサイドバックで起用されることが多かったせいもあったろう。

 それが、主戦フォンテの移籍(ウェスト・ハム)などで本職の持ち場に返り咲いて以来、今やれっきとしたセインツDFの柱然として安定したプレー内容を維持し、指導陣からの信頼も上々のようである。仮にフォンテの穴埋め補強がうまくいかなかったゆえの次善策に乗っかった成り行きがあったとしても、そのチャンスをしっかりとものにして築きつつある現在のスタンスは、彼の資質に運も味方したゆえに結実と評価してよさそうだ。

 取り急ぎ、最新のゲーム、3-1の逆転快勝に終わったクリスタル・パレス戦を“資料”に取り上げてみよう。サイドバックとはいえ、ポルトガル代表でもおなじみの通り、セドリックは盛んに攻めあがる。実戦的感覚ではもうウィングバックに近い。

 つまり、セインツDFは実質的に3バック、その中心に吉田がいる。両脇の若いスティーヴンズとマックイーン(セドリックほどには前に上がらない)を、いつなんどきでもカバーできるポジション取りに腐心し、たまに敵陣からのロングボールにいち早く前に出てブロックする以外、じっと落ち着き払ってGKフォースターとの距離を意識しながら、ディフェンス全体のバランサー役を任じる。すなわち「統率」している。そして、目立つこともない。

 そこで、冒頭にあげたあの“説諭”がリンクしてくる。内容自体はどうということもない(はず)。大切なのは、経験の浅い相棒たちと言葉をかわす(かける)コミュニケーションそのもの、もしくはその意思と姿勢。

 もちろん、若手の、および吉田自身にとっても、ゲーム直前の緊張感をほぐす効果もありそうだ。気取らず、ちょっとコミカルな人懐っこさが、そこで顔を出すのは吉田ならではのキャラか。さて、当のスティーヴンズたちは内心、どう思っているのだろうか。

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