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Jリーグ 7年前

「湘南スタイル」継続が導く10代選手の積極起用という必然。ぶれない指揮官の熱い思い

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ベルマーレの財産。「縦へ紡ぐイズム」に導かれた必然

 FC岐阜戦も然り。痛恨のミスを犯した。それでも下を向くのは一瞬だけ。何がなんでも自分で取り返してやる、という執念に近い思いが伝わってきたその後のプレーを、何よりも評価している。

「自分がボールをもっているときのプレーは雑。でも、前にスペースがあったら鬼のように出ていく。それがアイツのよさだけど、あそこでアシストするのはメンタリティー的に言えば逆にたいしたものだよ」

 ヘッドコーチから監督に昇格した2012シーズン。19歳にして3バックの中央を任せた遠藤航(現浦和レッズ)はいわば例外で、10代の選手を積極的に起用できる状況ではなかったと曹監督は振り返る。しかし、いま現在は違う。ぶれることなく積み重ねられてきた歴史が、ベルマーレを劇的に変えた。

「湘南のサッカーがどのようなものか、彼らはわかっているから。ミツキ(齊藤)やヒロカズ(石原)は小学生のときからウチで育ってきた選手だし、ユウタ(神谷)やダイキ(杉岡)は高校からチームを選ぶところで、そういうところの温度は以前とはまったく違いますよね。

 たとえば『縦にボールを入れろ』と言われたときに『初めて聞きました』というわけではないから。そういうサッカーをやっているから自分たちも、となったわけだし、さらには先輩選手たちを通して、我々が最も大事にしてきた歴史というものが自然と伝わっているというか」

 反町康治監督(現松本山雅FC監督)をはじめとする、歴代の指揮官たちが種をまき、曹監督のもとで芽を出し、ときには踏みつけられながらも現在進行形で力強く伸びている「湘南スタイル」。齊藤や杉岡、石原の台頭は、ベルマーレの財産でもある確固たる「縦へ紡ぐイズム」に導かれた必然でもあった。

「先に2点目を取っていたら今日の試合は終わっていたと思うし、その意味ではまだまだ勉強しなきゃいけないし、まだまだ成長できる余地があるということ。2012年でも2014年でもない、2017年バージョンのチームを作っていかなきゃいけないところで、反省しながら次に向かっていきたい」

 FC岐阜戦で勝利していれば、名古屋グランパスを抑えて単独首位に返り咲いていた。しかし、42試合を戦う長丁場のJ2戦線は、まだ8節を終えたばかり。何よりもJ2降格から捲土重来を期す新生ベルマーレにとって、ドローは小休止ではなく、ホープたちが中心となって輝く未来を生み出す糧になる。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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