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チェルシー、プレミア制覇の核心はコンテの二大采配に。新機軸3-4-3と一体感の醸成

text by 山中忍 photo by Getty Images

3バック導入に見る「緻密さ」。特性の見極めに狂いなし

今季からチェルシーでプレーしているエンゴロ・カンテ。新加入ながらチームの軸となった
今季からチェルシーでプレーしているエンゴロ・カンテ。新加入ながらチームの軸となった【写真:Getty Images】

 システム変更の決断が、母国イタリアでの実績もあり「いけると思っていた」と言うコンテの「感覚」によるものであれば、チェルシーの3バック習得はコンテの「緻密」な一面による。

 選手との対話を欠かさず、練習映像にも目を通して持ち駒の特性を見極めた監督は、ウィンガーのモーゼスに守備と学習の意欲を見て取った。右SBセサル・アスピリクエタの堅実なパスにも着目し、ウィングバックではなく3バックの一端を任せた。

 中央のD・ルイスが示した安定感は、アスピリクエタとガリー・ケイヒルという「守備の人」に挟まれていること以上に、当人が「しょっちゅう話をして勉強させてもらった」と言っている通り、密な戦術指導の成果だと言える。

 攻め込む時には前線に5名、引く時には後方に5名となる組織的な機能の体得は徹底的な反復練習の賜物だ。ポジションを示すコーンや相手選手代わりのダミーは、往々にしてコンテ自身が配置していたという。

 欧州戦がない日程にも助けられて新システムのマスターに取り組んだチェルシーは、基本化1ヶ月後の11節にして、即席3バックでマッチアップを試みたエバートンを蹴散らしている(5-0)。

 二大采配のもう1つは今年4月、マンチェスター・ユナイテッドに零封された(0-2)後のFAカップ準決勝(4-2)でのこと。相手は2位で4ポイント差に詰め寄っていたトッテナム。負ければリーグ優勝争いでの形勢逆転が見込まれた大一番で、コンテはアザールとジエゴをベンチに置いた。

 賭けは大成功。先発の機会を得たウィリアンと後半にベンチを出たアザールが計4得点に絡み、ライバルを凌ぐ選手層をもアピールした。3日後のサウサンプトン戦(4-2)では、温存明けのジエゴが2ゴール1アシストと活躍してもいる。

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