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マンU、モウ1年目は「成功」にあらず。EL制覇も、遠ざかったユナイテッドらしさ

text by 山中忍 photo by Getty Images

軌道修正を強いたイブラヒモビッチの負傷離脱

ヨーロッパリーグを制したマンチェスター・ユナイテッド【写真:Getty Images】
ヨーロッパリーグを制したマンチェスター・ユナイテッド【写真:Getty Images】

 だが、それは格下との対戦で3ポイントを重ねて優勝を争えればの話。引分けがリーグ最高の15試合を数えたユナイテッドは「勝てない」チームだった。クラブ新記録のリーグ戦25試合連続無敗にしても、半数近い12試合で1ポイント獲得に止まった。

 ユナイテッドの今季ベストゲームとしては、31節チェルシー戦(2-0)がすぐに思い浮かぶ。守備面ではエデン・アザールへの徹底したマンマーク、攻撃面では先発したマーカス・ラッシュフォードのスピードが効いた零封勝ちだが、他に候補となる試合がほとんど浮かばない事実も否定し難い。

 モウリーニョ自身は、5月に入って「EL優勝を逃したとしても今季は成功」との自軍評価を示唆する発言をしている。理由は「前例のない実績」。前述の連続無敗記録がその1つだが、もう1つはクラブ史上初となる新体制1年目の主要タイトル獲得。リーグカップ決勝でサウサンプトンを下した(3-2)時点で達成されていた。

 だが、その決勝のウェンブリー・スタジアムで、優勝監督とは思えない冷めた表情を浮かべていたのはモウリーニョ自身。試合後の会見で「なぜ喜ばないのか?」と質問までされた指揮官の意識は、国内第2のカップ選手権よりも、まだ可能性が残されていたプレミアでのトップ4に向けられていたのだろう。当人もユナイテッドのファンも、リーグ優勝争いに復帰しながらのトップ4返り咲きを目標として今季に臨んでいたはずなのだ。

 ズラタン・イブラヒモビッチが2得点だったリーグカップ決勝は、35歳の新CFへの依存度の高さを示す好例でもあった。リーグ戦17ゴール5アシストのイブラヒモビッチがいなければ6位すら怪しかった。

 実際、前線の大黒柱が膝の靭帯を損傷した4月後半から、ユナイテッドはリーグ順位ではなくEL優勝によるCL出場権獲得へと注力対象を完全に切り替えざるを得なかった。

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