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ハリル、謎の奇策連発で自滅。シリア戦の“テスト”は全く生かされず

text by 編集部 photo by Getty Images

ハリルホジッチ
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督【写真:Getty Images】

「いいテストになった。たくさんの交代ができ、たくさんのことを試すことができた。たくさんのポイントで得るものがあった」

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が成果を強調していた7日のシリア戦の意義とは何だったのだろうか。

 13日のロシアW杯アジア最終予選、イラク戦。ハリルホジッチ監督が採用した戦い方は、シリア戦の戦いぶりから全く想像できないものだった。

 香川真司が負傷離脱し、山口蛍も出場は難しい状態で迎えた13日の試合では、大胆な布陣変更が行われた。システムは3月から直前のシリア戦まで採用していた4-3-3ではなく、従来通りの4-2-3-1に戻され、1トップに大迫勇也、右ウィングに本田圭佑、左ウィングに久保裕也、トップ下・原口元気、ダブルボランチに遠藤航と井手口陽介というメンバーが送り出された。

 シリア戦で後半途中から4-3-3の中盤インサイドハーフに入り、好パフォーマンスを披露していた本田はイラク戦でも同じポジションで起用されるのではないかと見られていたが、結局は一度失ったポジションである右ウィングに据えられた。

 原口のトップ下や久保の左サイド起用もシリア戦ではテストしておらず、それ以前の試合でも見られなかった形だった。特に久保は左サイドバックの長友佑都と初めてコンビを組み、低調なベテランDFと連携が合わず窮屈そうにプレーしていた。守備でも長友のカバーに奔走し、相当な距離を走らされた挙句、終盤に足を痛めて満足に動けなくなって攻撃にエネルギーを割けなかった。

 トップ下に入った原口は執拗に狙われた。相手は後ろからだろうが、遅れていようが構わず強烈なタックルを見舞い、日本の背番号8はその度に苦悶の表情を浮かべる。後半途中の早い段階で交代を命じられたが、そのあと酷暑の影響が出てくることが考えられる中で、まだ走れる原口を下げた采配には疑問が残った。結局交代枠を使い切った後も足を痛めた久保をピッチに残しておかなければならなくなった。

 若いボランチコンビもシリア戦まで一度も試したことがなかった。破綻することはなかったが、W杯最終予選のアウェイゲームで、あまりにリスクの大きすぎる決断だった。井手口はシリア戦にも出場しており、安定したプレーを見せていたが、残念ながら後半に脳しんとうを起こして途中交代。遠藤も以前出場した時から成長した姿を見せ、90分間しっかりとバランサーとして中盤を引き締めたが、危うい場面も当然あった。

 終わってみれば結果は1-1のドロー。ハリルホジッチ監督はこれまでの積み上げを自ら捨て、シリア戦の“テスト”を無駄にしてしまった。先制しながら追いつかれて引き分けたのは、指揮官の采配による自滅と言えるかもしれない。

【了】

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