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Jリーグ 7年前

名波ジュビロが示した覚悟。守勢にまわろうとも柔軟に。13年ぶり6連勝で深まる自信

text by 青木務 photo by Getty Images

状況に応じた戦い方の選択。割り切りも柔軟に

 選手・監督の言葉からもわかるように、川崎F戦は守備に回る時間が長くなることを覚悟していた。時に5バック気味になりながら、相手が自由にプレーできるスペースを一つずつ潰していった。

 それでもコンビネーションからこじ開けられそうになったが、大井を中心に粘り強く対応。森下はゴールライン際でボールを掻き出し、カミンスキーも好セーブでチームを盛り立てた。攻撃への切り替えも早く、高橋祥平のパスカットを合図にカウンターから3点目を奪っている。

 磐田の最終ラインは3枚で、攻められている時はボールサイドにスライド、逆サイドのウィングバックが一列下がって4バックになる形を敷いている。昨シーズンもこうした戦いで相手に挑んだが、一人が出遅れるとそれが綻びとなり、最後は修繕不能なほど大きな穴となって失点に繋がっていた。

 一方、今シーズンは試合状況に応じてしっかりブロックを作って戦うという選択肢が加わった。前と後ろの距離感も良く、高い位置から奪いに行くにしても一旦引くにしても、コンパクトさは維持されている。

「現場で起きていることは何だ、というのを選手がピッチで表現できていると思う。『今は(前から)行ってもしょうがないだろう』といった時にたまたま5人になっていて、相手に出て来られた時の危機感がそういう(5バック的な)立ち位置にさせていると思う」

 ハナから自陣に引き篭もることを名波監督は許さないが、対峙する相手をケアするために後ろの枚数が増えるのは問題ない。また、昨シーズンにトライアンドエラーを繰り返したことも今に活きているように思う。

 5枚で守る状態になったとしても隙あらばボールにチャレンジするのはもちろん、押し込まれた状況で割り切って引くという選択も柔軟に使えるようになった。勝利のためにすべきことを選手たちが実践し、川崎Fにも通用した。この事実は今後へのポジティブな材料だ。

 磐田は勝ち点を34に伸ばし、6位に浮上した。苦しみながら勝ち取った今回の3ポイントは、選手たちの野心にまた火をつけるはずだ。試合のたびに自信を深めるチームは、次節・サンフレッチェ広島戦へ向け準備を始めている。

(取材・文:青木務)

【了】

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