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ジダン・レアル、最強の全方位型。勝利の一点で結束、“白い巨人”の遺伝子【西部の戦術アナライズ】

FIFAから「20世紀のクラブ」として表彰されているスペインのレアル・マドリー。15/16、16/17シーズンとUEFAチャンピオンズリーグを連覇し、黄金期といってもいい時代を迎えている。“エル・ブランコ”の強さはどこにあるのだろうか。『サッカー戦術クロニクル ゼロ トータルフットボールの源流と未来』を上梓した著者が読み解く。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

20世紀のクラブから21世紀のクラブへ

現地時間8月8日にはUEFAスーパーカップを制したレアル・マドリー
現地時間8月8日にはUEFAスーパーカップを制したレアル・マドリー【写真:Getty Images】

 FIFAはレアル・マドリーを「20世紀のクラブ」として表彰した。55-56シーズンにスタートしたチャンピオンズカップ(現在のUEFAチャンピオンズリーグ)に優勝し、そのまま5回連続でビッグイヤーを独占している。ディ・ステファノ、プスカシュ、ヘント、サンタマリアといった錚々たるメンバーを揃えたオールスターチームだった。

 2016-17シーズン、CL史上初の連覇を達成。4シーズンで3回の優勝は1950年代の黄金時代を彷彿させる成績である。この調子なら「21世紀のクラブ」もレアル・マドリーになるだろう。

 強さの源泉は選手のクオリティーだ。その時代の最も優れた選手たちを集めてきた。ただ、補強は主にアタッカーであり、キャラ被りやポジションバランスなどお構いなしの傾向はある。

 50年代の黄金時代には当時世界最高のプレーヤーだったディ・ステファノを擁しているのに、ランス(フランス)からコパを引き抜き、さらにブラジルの至宝ジジ、ハンガリーのスーパースターだったプスカシュとビッグネームを獲得し続けた。

「銀河系」と呼ばれた時代もフィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカム、オーウェン……補強というよりコレクションに近い。

 現在の陣容も攻撃寄りに変わりはない。ベイル、ベンゼマ、ロナウドのBBCにアセンシオ、イスコがいて、昨季まではハメス・ロドリゲスとモラタまでいた。この夏の間にはムバッペ(モナコ)を獲得するという噂もある。

 この過剰ともいえる戦力を率いる監督には、スター軍団をコントロールする手腕が求められる。これに失敗するとレアルでは生き残れない。選挙で選ばれている会長には絶大な権力があり、メディアの目も厳しい。

 選手のほとんどには海千山千のエージェントもついている。火のないところにも煙が立つ、一筋縄ではいかない環境だ。選手をコントロールし、会長を黙らせ、メディアを制御するには、勝って勝って勝ちまくるしかない。

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