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イングランドに残るフットボールの原風景。利益求めず…8部クラブが目指す真の地域密着

今夏フットボール界の話題をさらったのは290億円が動いたネイマールの移籍であり、昨今はそういった想像を超えるスケールのニュースが飛び交う。イングランド・プレミアリーグは世界的な人気を獲得し、年々規模を拡大しているところだ。その一方で、イングランドにはフットボールの原風景とも言えるクラブも残っている。隣町がブライトン&ホーブ・アルビオンのプレミアリーグ初昇格に湧く中、8部相当のアマチュアリーグに所属するルイスFCは独自のビジョンを掲げて、地域に真のコミュニティ文化を作り出そうと奮闘している。彼らはどこを目指し、何を求めてクラブを運営しているのだろうか。(取材・文:ショーン・キャロル)

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

ブライトン躍進のすぐそばで。利益求めず運営される小さなクラブ

ルイスFC
イングランド8部相当のアマチュアリーグに所属するルイスFCは、独自のクラブ運営方針に基づいて理想の形を追いかけている【写真:ショーン・キャロル】

 先週土曜日(12日)、私の故郷のチームであるブライトン&ホーブ・アルビオンがプレミアリーグでの初めての試合を戦い、本拠地アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアムでマンチェスター・シティに0-2の敗戦を喫する結果に終わった。

 イングランドのトップリーグ到達に向けたシーガルス(編注:ブライトンの愛称)の道のりは長く劇的なものだったが、4シーズンで3度のプレーオフ敗退を味わった後、昨年のチャンピオンシップを2位で終えてついに昇格を成し遂げた。

 もう少し過去を振り返れば、ちょうど20年前には4部リーグまでで構成されるプロサッカーのピラミッドから転落する寸前にまで追い込まれたこともあった。1996/97シーズン最終節のヘレフォード・ユナイテッド戦でロビー・ライネルトが62分に同点ゴールを奪い、総得点差で辛うじて92チームによるプロリーグの一員の座を維持することができた。

 旧ファースト・ディビジョンでブライトンが最後にプレーしたのは1979年から1983年まで。今回のトップリーグ復帰は当然ながら地元の町を大いに盛り上げ、明るいニュースとして全国に伝えられた。現在のイングランドでは多くのファンが、企業とカネにより推進されるプレミアリーグへの期待を急速に失い、しばしば「本来の」フットボールと呼ばれるものとの繋がりを再構築しつつある。

 移籍金の世界最高額となる約290億円でネイマールがバルセロナからパリ・サンジェルマンへ移籍することが決まった翌日に、私はそういった例のひとつであるルイスFCを訪問した。イングランドのサッカーピラミッドの8部リーグに属するコミュニティクラブだ。ここでのやり方は他と全く異なっている。

 ブライトンの本拠地があるファーマーから、サウス・ダウンズを電車で横切ることわずか5分。ルイスFCは、地元共同体に人々の繋がりを提供し、それを維持するために存在するクラブとして着実に評価を高めつつある。

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