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イングランドに残るフットボールの原風景。利益求めず…8部クラブが目指す真の地域密着

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

現在1200人のオーナーが存在。地元コミュニティの中心を目指す

 2007/08シーズン、ルイスFCはノンリーグ(編注:イングランドにおけるプロリーグより下の階層の総称)のクラブの多くが抱いている夢への一歩前進を果たした。プロリーグからわずか1段階下のカンファレンス・ナショナル(現ナショナルリーグ)への昇格を果たしたのだ。だがその翌日には、コーチングスタッフと選手のほぼ全員が契約を解除されてしまう。建築業を営むオーナー陣が、世界的な金融危機により多額の資金を失い、支払い不可能に陥ったためだ。

 牧歌的な本拠地ドリッピング・パンで123年間を過ごしてきたルイスFCも、破産の本格的な危機に立たされた。だが6人のファンが団結し、コミュニティークラブへの転換を通してクラブを消滅から救うことに成功。つまりファンが保有し、ファンが出資し、一切利益を生むことはないクラブになったということだ。

「現在1200人前後のアクティブなオーナーが存在し、それぞれが年間に最低で30ポンド(約4300円)を支払っています」とルイスFCのコマーシャルマネージャーであるケビン・ミラー氏は、プレシーズンのバージェス・ヒルとの親善試合の前に語ってくれた。フルタイムで働くスタッフは、彼を含めてわずか3人しかいない。

 興味を持った方がいれば、クラブへのサポートを誓ってオーナーの一員になることができる。支払う金額の多寡にかかわらず、どの個人もクラブを一口以上保有することはできない。ルイスFCはあくまでコミュニティ団体であろうと努めているためだ。

「非常にオープンで相互利益を生む共同体として、我々の収支は全てオンライン投稿され、売上高もそこに記されています」とミラー氏はクラブの構造について説明してくれた。「ネイマールの1週間の給料で、クラブの売上総額に相当するでしょうね」とも。

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