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日本代表 7年前

幾度も苦境に陥ったドイツW杯予選。立ち上がったベテラン、「アブダビの夜」が転機に【アジア予選激闘史】

シリーズ:ワールドカップ・アジア予選激闘史 text by 元川悦子 photo by Getty Images

ポジショニングを巡る衝突。主力組は控え組に敗戦

1年あまりの離脱を経て、最終予選途中で日本代表に復帰した中田英寿
1年あまりの離脱を経て、最終予選途中で日本代表に復帰した中田英寿【写真:Getty Images】

 最終予選初戦の北朝鮮戦では、中村の定位置であるトップ下に抜擢された小笠原満男(鹿島)がいきなりFKを決めて先制。指揮官の采配がズバリ的中した。しかし、後半に入って同点追いつかれ、日本は窮地に立たされる。

 そこでジーコはすぐさま高原と中村を投入。圧倒的に攻め込みながら1点が奪えないまま、後半ロスタイムに突入する。このまま勝ち点1で終了かと思われた瞬間、玉田圭司(名古屋)に代わってジョーカー起用された大黒将志(京都)が劇的ゴールをゲット。「大黒様」の異名を取る男の一撃で、日本は何とか白星発進を見せることができ、安堵感が広がった。

 だが、真の難題はここからだった。3月の第2戦はアウェイ・イラン戦(テヘラン)。このタイミングで1年間代表から離れていた中田が戻ってきたのだ。「中田は代表に必要か」「彼が戻ったら、中村と小野とどう併用すべきか」といった議論まで起きるほど、王様の再合流は物議を醸していた。

 3-5-2の場合、トップ下は1枚しかないから中田が入るとなれば、中村を外さなければならない。ジーコが講じた策は4-4-2への回帰だった。最終ラインから田中誠(解説者)を外して4枚にし、中盤は小野と福西崇史(解説者)がボランチ、中田と中村が攻撃的MF、FW高原と玉田を並べる形を採ることにし、テヘランへと乗り込んだ。

 ところが、決戦を2日後に控えた練習で1つの事件が起きる。中田と福西が守りのポジショニングを巡って口論に発展。挙句の果てには紅白戦で主力組が控え組に負けてしまった。チームの雰囲気は険悪になり、練習が終わるや否や中田が顔を真っ赤にしてバスに乗り込んでしまった。

 福西は「動きを確認しただけ」と言い放ち、加地は「ヒデさんの後ろに敵が来た時、ヒデさんが行くか、フクさんが行くかという話。フクさんが前に出てしまうとボランチのところが空くし、自分や佑二(中澤=横浜)さんがカバーすると、もっと大きな穴が出来る」と困惑を隠せない。肝心のジーコは「選手たちで決めてくれ」といわんばかりで、話し合いに参加しなかった。

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