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マンC、2年目で浸透した“ペップ・イズム”。「選手の才能を引き出す」指揮官の真髄

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

快進撃はいつまで続く? ファンは早くも“四冠”を…

ストーンズ
昨季は不安定極まりなかったジョン・ストーンズもたくましく成長。今では欠かせない守備の柱になっている【写真:Getty Images】

 特にストーンズについては、「昨季はミスが多く、1試合中確実に1つか2つミスをしていて、集中力が欠けていた」と説明し、「しかし今季はボールに集中している。彼のクオリティの高さはもともと分かっているし、常に進化している」と、教え子の日就月将の成長ぶりに目を細めていたのが印象的だった。

 話を新加入選手に戻すと、GKと並ぶ大きな補強ポイントだった両サイドバックも、右にはトットナムから加入したカイル・ウォーカーが素早くチームにフィットしている。ウォーカーは持ち前の攻撃力をいかんなく発揮し、豊富な運動量で守備面でも貢献度が高い。一方の左サイドには、モナコから獲得したバンジャマン・メンディが存在感を示していたが、先月23日のクリスタル・パレス戦で右ひざを怪我して長期離脱となってしまった。

 代わって登用されたのは、中盤が本職のデルフ。過去2年間ほぼ出番のなかった選手だが、それだけに新しい選手を補強したのと同じような効果を持っている。またD・シルバやデ・ブライネの好調でスタメンの機会は少ないものの、ベルナルド・シルバも出場すれば好プレーを見せ、今季の補強は軒並み成功している。

 ここまでのところは何もかもが順風満帆のように見え、ペップ自身も昨季のようなフラストレーションを募らせていない。それは試合後の記者会見やインタビューでジョークを言う姿からも容易に感じ取ることができる。明るい表情が目立ち、前述のストーク戦や2-1で勝利した先日のCLナポリ戦後には、「とてもハッピーだ」と繰り返した。勝敗よりも内容を大事にするだけに、チームが自分の考える攻撃的なサッカーがハマり、そして勝利を重ねていることがたまらなく嬉しい様子だ。

 選手、そして監督としても豊富な経験を持つペップ自身も、これまでと勝手の違う1年目のプレミアリーグで学んだことが多かったに違いない。例えば、昨季は毎週のように先発メンバーやシステムを変え続け、今季はメンバーを固定し結果を残している。そういった指揮官自身の成長も、好調につながっているといえるだろう。

 最高のスタートを切っただけに「プレミアリーグ、CL、FA杯、そしてリーグ杯の”クアドルプル(四冠)”を取る!」と、シティのサポーターの鼻息は荒い。しかしまだ10月下旬。シーズン中は一山もふた山もあることが予想されるが、果たしてこのまま快走を続けることができるのだろうか。

(取材・文:松澤浩三【イングランド】)

【了】

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