フットボールチャンネル

マンC、2年目で浸透した“ペップ・イズム”。「選手の才能を引き出す」指揮官の真髄

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

選手の才能を引き出し、伸ばす。グアルディオラの特別な能力

 だが昨季のシティの選手たちは、“ペップ・グアルディオラ”という現役最高監督と目される存在に心酔した一方で、フットボール史上に残る智将の求める質の高いサッカーを体現することができなかった。しかし1シーズンを終えて迎えた今季は、ペップの持つ理論をしっかりと理解したうえで、ピッチ上で具現化させることに成功している。

 現在のシティを見ていると、サッカーがシンプルなスポーツであると改めて確認させられる。「点を多く取ったほうが勝つ。それならば、より多く点を奪おう」という意識の下で行われるサッカーだ。そのためには高い位置から敵のDFやMFに対して、1人、2人、3人と次々にプレッシャーをかけてボールを奪い、そこからすぐに攻撃に転じて敵のゴールを襲撃し、得点の可能性を高めていく。

 そのプレーぶりは、当たり前かもしれないが、ペップの率いたバルセロナを彷彿とさせる。指揮官の持つ目的意識を選手が共有しピッチの上で形にしているのだ。例えばセルヒオ・アグエロは、ペップがやってくるまでのチームでは決してプレスをかけることがなく、点を取ることだけに専念していた。球離れが悪く、独善的なプレーが目立ったラヒーム・スターリングも、今ではワンタッチ、ツータッチでボールを捌いてパス&ムーブが当たり前になった。
 
 英『タイムズ』紙でサッカー部門の主筆を務めるヘンリー・ウィンター氏は、アグエロやスターリング、ストーンズを例に挙げて「グアルディオラは才能を引き出す監督」と評価している。

「ストーンズは今季これまでのところのベストCBで、スターリングは477分プレーして6得点2アシスト。素晴らしいリターンだ。グアルディオラの下、プレーの選択をする判断力が大幅に改善されて、フィニッシュも目に見えて上手くなった。アグエロはペナルティエリアの外でも仕事のできる、よりオールラウンドなストライカーになっている」

 リバプールのレジェンドのケニー・ダルグリッシュを父に持ち、『BBC(英国国営放送)』や『スカイスポーツ』で活躍するフットボールジャーナリスト、ケリー・ケイツ氏も「高いカネで選手を獲っているように見えるが、そういったすでにトップレベルの選手をさらに上達させるのがペップの技術」とスペイン人指揮官を称賛する。

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top