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マンC、2年目で浸透した“ペップ・イズム”。「選手の才能を引き出す」指揮官の真髄

マンチェスター・シティが強い。昨季は序盤戦こそ好調だったものの、その後の不振から抜け出せなかった。だが今季はパフォーマンスを落とす気配すら見せない。ペップ・グアルディオラ体制2年目にして、これだけの力強さを維持できている背景には何があるのだろうか。(取材・文:松澤浩三【イングランド】)

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

敵将も白旗の圧倒的な強さ。今季のシティは未だ負けなし

グアルディオラ
ペップ・グアルディオラがマンチェスター・シティにやってきて2年目。ついに名将の真価を発揮している【写真:Getty Images】

 ペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティの進撃が止まらない。昨季も序盤戦は好調で公式戦開幕10連勝と最高のスタートを切ったが、9月下旬のチャンピオンズリーグ(CL)のセルティック戦を3-3で引き分けると、直後の5試合も勝利から見放された。破竹の勢いはどこかへと消え、その後は、シーズンを通じて再び強さを感じさせるパフォーマンスを見せることはなかった。

 翻って今季は昨季に勝る好調ぶりで、ここまで13勝1分の負けなし。特筆すべきはその攻撃力だ。開幕から14戦を終えた現時点で、チーム総得点数は42(リーグ戦:32、CL:8、リーグ杯:2)に対して総失点数はわずか6(リーグ戦:4、CL:1、リーグ杯:1)。4点差以上をつけて勝利した試合がすでに5試合もある。

 直近のプレミアリーグでも、勢いに乗るバーンリーを3-0であっさりと退けた。さらに前週のストーク戦では、流れるようなパス回しと抜群の決定力で7-2と圧倒。敵将は以前にシティを指揮していたマーク・ヒューズで、ブルーズ(シティの愛称)に対してはいつも辛口な元監督までも「パス、そしてシュートの質が高く、何もできなかった」と白旗を揚げた。

 とはいえ今後もこのハイペースを維持してゴールを量産し続けるのは容易ではなく、残り7ヶ月あるシーズン中にはスランプに陥ることもあるだろう。しかしながら、個人的には、昨季のように大失速する可能性は低いと感じている。今季のチームの完成度の高さを考慮すると、必然的にそのような評価に落ち着くからだ。

 先述のとおり、シティの攻撃力は爆発的だ。ただ、今季の強さの根底にあるのはそれではない。結論からいえば、グアルディオラ政権2年目のチームには“ペップイズム”が浸透したからである。

 昨季シティの選手たちは、新たにやってきた指揮官の持つフットボール哲学やそのコーチぶりを褒めたたえた。昨年の夏チームに加入したばかりのジョン・ストーンズは「練習と実践、すべての面から毎日いろいろなことを吸収している。学ぶことは多いからすべてを吸収するのは大変」と舌を巻き、ファビアン・デルフなどは「監督と過ごした最初の2週間で、これまでサッカー選手として過ごした10年間よりも大きなことを学んだ」と口にしたほどであった。

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