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Jリーグ 6年前

長崎、J1昇格という夢物語。3億にも及ばぬ強化費からの快挙。企業クラブのその先へ

text by 藤原裕久 photo by Getty Images

「チーム高木」を継続していけるか

V・ファーレン長崎の高木琢也監督
V・ファーレン長崎の高木琢也監督【写真:Getty Images】

 経営難に揺れた開幕前の喧噪から一転、J1自動昇格という大逆転のドラマの末、J1で戦う権利を得た長崎だが、J1というクラブにとって未知の領域で戦うにはあらゆる面でのレベルアップが必要だ。

 クラブにとって最初のノルマとなる「J1残留」を達成するためにやるべきことは多い。そのためにまず取り組むべき準備は「チームの継続性を維持・強化すること」だ。ここでいうチームとは、監督、選手、スタッフのみではなく、高木琢也監督の下で5年に渡って培ってきた強化方針や、チームの方向性も含んでいる。

 10年以上のキャリアを誇る高木監督は、これまで子飼いのスタッフや選手を作らず、手腕一つでチームを渡り歩いてきた。またスカウティングや強化、フィジカルトレーニングまで一通りこなせることと、横浜FCでのJ1昇格や、熊本、長崎といったローカルクラブを降格させなかったこともあって「少ないスタッフで手堅く結果を出せる監督」と見る向きが多かった。

 それが長崎で5年に渡り指揮を執り、古くからいる選手やスタッフとの相互理解が深まったことで、今季は「チーム高木」とも呼べるサポート体制が早くに整い、高木監督の「結果を出しつつ、中・長期視点でチームを作る」という一面をより強く発揮させる力へとつながった。

 高木監督の打ち出す方向性や意向を受けたコーチ陣や強化スタッフが献身的に動き回り、髙杉亮太、前田悠佑、村上祐介といったベテラン勢に支えられた選手たちがそれに応える……。今季の長崎が、そんな好循環に入れたのは、そういった土台があったことを忘れてはならない。

 高木監督は契約期間をあと1年残しており、続投が基本的な路線ではあるが、この「チーム高木」体制が壊れるようなことになれば、高木長崎の失速は免れられない。「チーム高木」を継続していけるかが、そのまま来季の方針のベースと言い切ってもいいだろう。

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