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代表 6年前

豪州代表監督、衝撃の辞任。W杯半年前に決断した理由と背景…後任は元Jクラブ監督か

text by 植松久隆 photo by Getty Images

他の追随を許さないポスタコグルーの功績をどう引き継ぐか

グラハム・アーノルド
オーストラリア代表の後任には国内で実績を残したグラハム・アーノルドが適任か。かつてベガルタ仙台でも指揮を執った【写真:Getty Images】

 ただし、好調のシーズン途中でシドニーFCを離れるのも難しいと思われるので、折衷案でこんなオプションはどうだろう。まず、ゴンバウと共にポスタコグルー体制を支え、ゴンバウの後のU-23代表監督に就任したばかりのアンテ・ミリチッチを兼任の暫定監督として起用。年明けの3月中旬以降に予定される新体制始動となる親善試合の指揮を執らせる。

 その後に、一旦、ミリチッチの仕事ぶりをレビューして、必要とあらば、満を持してAリーグのシーズンが落ち着くアーノルドを監督に迎え入れる。ミリチッチが望めば、アーノルド体制のアシスタントコーチに就かせる。

 ポスタコグルーとアーノルドには、フットボールの志向としては差異がある。しかし、それが埋まらないレベルのものだとは思わない。その差異を繋ぎ補完する人材として、多くの名将の下で経験を積んできた名参謀のミリチッチは最適任。アーノルドとミリチッチの個人的関係の深さまでは分からないが、このコンビが実現すれば、アンダー世代の才能の発掘、新旧体制のトラジションなどで中々興味深いコラボレーションができるように思う。

 ポスタコグルーは、祖国の代表を2回W杯に導き、アジア王者へと育て上げた。マット・ライアン、トレント・セインスベリー、アーロン・ムーイ、トム・ロギッチ、トミ・ユリッチといったサッカルーズの屋台骨を向こう5、6年はしっかり支えていくだろう選手たちが代表選手として大きな成長を見せた。

 彼が成し遂げた仕事の質と量は、国内の殆どのコーチの追随を許さないレベルのものだが、ただ1人、後を追う資格を持ち得るのが、ポスタコグルーとお互いが良き友人であるアーノルド。上に挙げた選手のうち、ライアン、セインスベリー、ロギッチはアーノルドに見出されて、世に出た選手たちでもある。

 だからこそ、ポスタコグルー→アーノルドという政権移譲を期待したい。そうなれば、ポスタコグルーの強いイニシアチブの下で培ったものを失わず、時計の針を戻すことないサッカルーズの進歩が見られる気がする。

 長年、筆者がこのコラムで追ってきた「ポスタコグルー革命」は、今回の辞任劇をもって終わりを迎えた。今すぐ、この革命の成果を振り返るのは、時期尚早。当のポスタコグルーは、彼自身が残したレガシーを引き継いだ豪州がさらなるフットボール・ネーションに育っていくのを、彼が言うところの「少し離れたところ」から見守る。

 筆者を始めとした豪州フットボール界は、高いスタンダードのクラブレベル、例えば欧州トップリーグでのポスタコグルー采配をが近いうちにい見られるものと楽しみに待つ。もしかすると、彼の指揮するクラブには彼の教え子が活躍するかもしれない。

 いずれにしても、今後も豪州とアンジの不可分な関係は続いていくーーそう信じたい。

(取材・文:植松久隆【オーストラリア】)

【了】

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