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WGの突破力が生むバルサとの違い。ザネ、ペップとの出会いで起きた化学反応【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

遺伝の力。サイドプレーヤーになるための先天的な才能

 ザネの父親は元セネガル代表のスレイマン・ザネ。ドイツ人の母親はロス五輪新体操で個人総合銅メダルのレギーナ・ヴェーバー。スポーツのサラブレッドだ。

 スカウトがチェックするのは持って生まれた才能だという。才能を伸ばすのはコーチの仕事だが、才能そのものをあとから加えることはできないからだ。チェック項目は5つ。GKの才能、CBの才能、プレーメーカー、ストライカーの才能、そしてサイドプレーヤーの才能だ。

中でもサイドプレーヤーになるための才能は最も先天性に負うところが大きい。スピードが決め手だからだ。速さは筋繊維の割合で先天的に決まっている。マラソン走者はスプリンターにはなれない。

 ザネのボール感覚や戦術眼は後天的なものかもしれないが、あのスピードは遺伝だろう。速く走れる仕組みを生まれつき持っている。DFと同じ高さでサイドに開き、そこへジャストのパスを送られてくれば、スペースへのワンタッチとスプリントで難なくディフェンスラインの背後へ入れてしまう。

 DFはザネのスピードに追いつこうと自陣ゴールへ向かって走るが、ゴールエリアの手前で減速する。そこからはGKのテリトリーであり、減速しなければ自陣ゴールへ自分がゴールインしてしまうだろう。

 一方、攻撃側の選手はアクセル全開。ザネがGKとDFの間にスピードのあるパスを通したとき、ブレーキとアクセルの差で攻撃側に有利となる。もし、DFに先に戻られたとしても今度はDFの手前が空く。シティはアーリークロスとプルバックでゴールを量産しているが、それができるのもサイドに絶対的な速さを持つザネ、スターリングの存在が大きい。

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