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WGの突破力が生むバルサとの違い。ザネ、ペップとの出会いで起きた化学反応【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

“メッシ”のいないチームの切り札

ジョセップ・グアルディオラ
マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督【写真:Getty Images】

 ザネは試合中のスプリントで時速35.47kmのプレミアリーグ記録を出したと話題になったことがある。今のところプレミア最速値だそうだ。ちなみにティラノサウルスやヒグマより速いらしい。

 速いだけでなく柔らかく、動きに無理が利く。183センチの長身でリーチがあり、スタートとストップが速いうえに歩幅が大きい。ボールを動かす幅とリズムが独特なので、非常につかまえにくい。ただし、現在のザネはおそらくまだ持っている能力の片鱗を示しているだけだと思う。

「君をもっと良いプレーヤーにする」

 シティのペップ・グアルディオラ監督はそう言ってシャルケ04からの移籍を促した。ペップは大きな才能と出会ったときに化学反応を起こす監督だ。左利きの右サイドだったザネを左へスイッチしたのは、メッシのゼロトップやフィリップ・ラーム、ダビド・アラバのマルチロールに比べると地味な変化かもしれないが、ザネの縦へのスピードはシティを進化させはじめている。

 “ティキ・タカ”で堅固な守備ブロックに穴を開けるのが難しくなったのは、ユーロ2016ではっきりしていた。ドイツもフランスもスペインも攻めあぐみ、ボックス内に長身頑健なCFを送り込むことで打開を図っていた。

 シティは巨大な“ハンマー”を持たないかわりに、サイドの速さが有効だということを示している。メッシやネイマールやアザールを持たないチームにとって、どうやって点をとればいいかを教えてくれている。

 W杯連覇を狙うドイツ代表にも“メッシ”はいないが、ザネはいる。21歳で急速に進化しているうえ、毎日のトレーニングでペップの指導を受けている。ロシアワールドカップまでの期間でも、もう今とは違うザネになっているかもしれない。

(文:西部謙司)

【了】

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