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いわきFCが体現する日本サッカーの新基準。既存クラブとは明確に一線画す壮大な冒険【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Getty Images

サッカーというスポーツを通じて実現させる3つの夢

「株式会社いわきスポーツクラブ」の大倉智代表取締役
「株式会社いわきスポーツクラブ」の大倉智代表取締役【写真:フットボールチャンネル編集部】

 天皇杯3回戦で同じくJ1の清水エスパルスに善戦しながら、0‐2のスコアとともに快進撃を止められた直後にも、大倉代表取締役は同じニュアンスの言葉を残している。たとえれば禅問答のような説明になるのは、いわきFCが発足した経緯と密接に関係している。

 いわきFCはもともと、福島県立湯本高校サッカー部の一員として全国高校選手権大会に出場した経験をもち、いま現在はいわきFCアカデミー事務局長兼U-15監督を務める向山聖也氏が2012年6月に立ち上げたクラブだった。翌2013年には福島県社会人リーグ3部西へ参入。同年11月には「一般社団法人いわきスポーツクラブ」が立ち上げられ、法人化された。

 一方で東日本大震災からの復興や地域の活性化を掲げ、2015年12月に冒頭で記した自社の物流センター「ドームいわきベース(DIB)」を設立した株式会社ドーム(本社・東京都江東区、安田秀一代表取締役CEO)が、同市内にサッカークラブを立ち上げることも決めた。

 総代理店としてアンダーアーマーを日本国内で展開するドームが設立した子会社「株式会社いわきスポーツクラブ」が、いわきFCの運営権を「一般社団法人いわきスポーツクラブ」から譲り受けた経緯を、湘南ベルマーレの代表取締役社長を退任して、代表取締役に就任した大倉氏はこう説明する。

「僕たちがここ(いわき市)にサッカークラブを作りたいという話をしていたときに、いわきFCを作った向山と理念が一致したこともあって、『じゃあ一緒にやろうよ』と。もともとは福島県の3部からスタートするつもりでしたけど、たまたま2部になったということです」

 2015年からカテゴリーを福島県社会人リーグ3部東へ変えていたいわきFCは、初優勝を達成するとともに2016年からの2部昇格を決めていた。そして、新たな体制のもとでスタートしたチームは、サッカーというスポーツを通じて実現させる3つの夢を掲げている。

【1】いわき市を東北一の都市にする
【2】日本のフィジカルスタンダードを変える~魂の息吹くフットボール~
【3】人材育成と教育を中心に据える

 いずれも一朝一夕ではかなわない。壮大な時間を要するからこそ、チームスローガンに『WALK』を入れ込んだ。決して目先だけの結果や勝利だけを追わないクラブの姿勢は、1年目の2016シーズンを戦い終えたオフの体制変更が鮮明に物語っている。

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