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「頭でわかっているのに、体が動かへん」。東口順昭が向き合い続けるGKとしての葛藤

text by 編集部 photo by Getty Images

東口順昭
東口順昭は自らにかかる重圧と向き合い続け、成長してチャンスを掴み取った【写真:Getty Images】

 東口順昭が日本代表に初めて招集されたのは2011年。それから6年あまりが経つものの、A代表キャップ数はわずかに4試合と伸びず、招集されても出場機会を得られない状態が長く続いている。

 日本代表での4試合目となった12日のEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会(E-1)の第2戦・中国戦ではPKによる失点こそあったものの、記念すべき2勝目を挙げた。「まずは勝てて良かった」と、東口は13日の練習後に語った。

 しかし、9日の北朝鮮戦では若い中村航輔がA代表デビュー戦でセンセーショナルな活躍を見せて大きな注目を集めた。ロシアW杯出場を目指す東口にとっても無視できないライバルに成長している。

「これ(中国戦)を続けていかないといけない。最低条件勝つというのはあったので、それは良かったと思いますけど、まだまだこれからも危機感というのはあるし、そのプレッシャーと戦っていかないといけないと思う」

 東口が向き合うプレッシャーは、日本代表で定位置を掴みきれない中で常に意識せざるをえないものだった。

「自分が感じているだけなんですけど、もちろん危機感もあるし、W杯に行きたいとか、行くためにやっぱりアピールせなあかん、ただアピールもなかなかうまくいかない現状で、どうしようという不安もありますし。自分が考えているだけなんですけど、そういうのはなんか…考えちゃいますね。結局プレッシャーとなってしまうんで。なかなか(日本代表に)呼ばれても出れへんかったし、出てもなかなか満足する結果を残せていなかったし、そういう意味ではすごい、ここ数年はずっとそういう感じですね」

 神妙な面持ちで自身が感じるプレッシャーについて語る東口は、その重圧との向き合い方が「まだあまりわからない」と、悩み続けている。「なかなか自分の中では消化しきれないので、弱いなあと思います。自分自身が」と、自らを戒めるようにゆっくりと言葉を紡いだ。

 そうやってJリーグで結果を残しながらもなかなか日本代表でチャンスを得られない困難な立場に置かれ、抱え続けてきた葛藤がプレーに影響することもあったという。「考えすぎて頭ではわかっているのに、体が動かへんというシーンもあったし、自分の中で考えすぎても良くないというのはわかるんですけど…」と、東口は暗いトンネルの先に見える光を探し続けている。

 これまで出場した日本代表戦で思うような結果が出なかったこともあったが、12日の中国戦では無事に勝利を収め、「代表とクラブの往復で、確実に自分の中では成長している」という実感も得ている。そして16日の韓国戦が、東口にとって今後のキャリアを大きく左右する一戦になるかもしれない。

「(E-1の)優勝もかかっていますし、優勝をしたら、より色々変わると思うので、そのくらい重要な一戦やと思う。日韓戦に出たいか? 出たいです、もちろん」

 大きな怪我で長期離脱を強いられることもあった。日本代表から遠ざかる時期もあった。しかしその度に立ち上がり、力を蓄えてきた守護神は、最後のチャンスに賭けて自らの運命を変えようともがいている。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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