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代表 6年前

未だ監督不在のオーストラリア。ケーヒルに頼らないチーム作りを【ロシアW杯全32チーム紹介】

シリーズ:ロシアW杯全32チーム紹介 text by 植松久隆 photo by Getty Images

ACL優勝経験持つストライカーと元Jリーガーのベテランが鍵に

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オーストラリア代表の基本フォーメーション

目標:ベスト8
ノルマ:ベスト16

 フランス、ペルー、デンマークという欧州、南米の実力派と同組に入ったサッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)の目標は、ひとつでも勝ち点を多く積んでグループリーグ突破を果たし、ベスト16進出から何とかその先を目指すということになるか。

 先のコンフェデレーションズカップでは、ドイツ、チリ、カメルーン相手に善戦。あと一歩でグループリーグ突破を逃し“グッドルーザー”として大会を去った。そこで勝ち点1の違いが何を生むかを実体験できたのは大きい。W杯では、隣国ニュージーランドとのプレーオフで勝ち上がってきたペルーが、彼我の相手関係から何とか勝ち点3をもぎ取りたい相手ということになる。アジア代表としての意地を見せ無様な敗退を避ける意味では、グループリーグ突破を目標というより、むしろノルマと設定して臨むべきだろう。

 キーマンには、FWのトミ・ユリッチと守備的なポジションを全てこなせるマーク・ミリガンを挙げたい。ティム・ケーヒルでなくユリッチに注目した理由は、やはりチームに少ない典型的センターFWとして、彼の爆発抜きでは勝利が覚束ないからだ。

 メルボルン・シティFCを電撃退団して新しいクラブを探す38歳の大ベテランのケーヒルに依存するのはあまりにリスキーだ。ユリッチが真の一本立ちを見せれば、大一番での決定力が売りのケーヒルをベンチからの切り札という最適な形で起用できる。ホンジュラスとのW杯予選大陸間プレーオフでも決定機を逃して天を仰ぐユリッチの姿が何度か見られたが、本番ではきっちり結果を出してくれるように願いたい。

 ミリガンは、その高いユーティリティ性が短期決戦で考えられ得る様々な状況下で重宝されるだろう。W杯という特殊な環境を既に3度経験していることも大きい。キャプテンのミレ・ジェディナクを補佐する立場でのリーダーシップも期待できる欠かせない選手だ。

 全体的な選手構成を見渡すと、サッカルーズの弱点はその前線にあることは明白だ。前述のユリッチは当確だが、クラブでの出場時間が安定せずに移籍の道を選んだケーヒルはこのまま不安定な状況が続けば、新監督の構想から漏れないとも限らない。そうなってくると前線の陣容が心もとない。残りの期間に余程の超新星が現れるか、ジェイミー・マクラーレンのような現有戦力の覚醒がなければ、大きな不安材料として残る。

 まさかの監督交代を経て臨む5度目のW杯。グリーン&ゴールドを身にまとうサッカルーズが、世界を相手にどのような戦いぶりを見せるかは、まだ見ぬ新監督の手腕に頼らざるを得ない。その新監督に残された時間は、4ヶ月弱とあまりに少ないことだけは確かである。

(文:植松久隆)

【了】


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