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天皇杯で躍進、いわきFCを作った2人の男。投資価値が見出されたクラブのあり方【いわきFCの果てなき夢】

シリーズ:いわきFCの果てなき夢 text by 藤江直人 photo by Editorial Staff

「さまざまな意味で調整役になっている自分が嫌だった」

鉄筋3階建ての日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウス『いわきFCパーク』
鉄筋3階建ての日本スポーツ界初の商業施設複合型クラブハウス『いわきFCパーク』【写真:編集部】

 ドームはこのファシリティの建設に、およそ22億円の資金を投じた。

「広告宣伝ではないので、彼らからすれば投資に対するリターンが必要となってきます。これはまさにスポーツビジネスの世界観なんですよね。当然ですけど、僕たちとしてはいわきFCというチームを通じてドームの理念を世の中に発信し、アンダーアーマー・DNSを売っていくことも担っている。

 その先にはスポーツに対する社会価値を増幅させて健康増進につなげる、あるいは一地方を創生しながら日本全体をスポーツで元気に、豊かにするという大義がある。もともとはJリーグもそこからスタートしているはずなのに、まったく違った状況になっているもどかしさがありました」

 大倉自身、ベルマーレの強化部長、ゼネラルマネージャー、取締役社長と無我夢中で突っ走ってきた過程で、長くJ2下位に甘んじてきたチームが2009、2012、2014シーズンと3度もJ1へ昇格する軌跡を共有してきた。1試合の平均観客数も、3000人台から飛躍的に増加してきた。

 その時々で感無量の思いに浸ってきたが、一方で現役を退いた直後に抱いた志をあらためて振り返ったときに、「僕のなかでモヤモヤしたものがあった」と自問自答を繰り返してきた。

「もともとはスポーツビジネスをやりたいと思い、引退してからいろいろなことを考えて飛び込んだ世界だった。このままずっと社長を続けて、日本サッカー協会やJリーグのなかではちょっと若手で、少し経験があるという立ち位置だと、さまざまな意味で調整役になっている自分が嫌だった。

 僕は本当に何がしたいのかと、特に社長になってから思い始めたときに再会したのが安田だった。社会を変えるという志をもって、本業ではないところにあれだけのお金をかけて、サッカー界へスポーツが大好きでビジネスのできる人間が入ってくれば、ものすごいイノベーションが起こると思ったんです」

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