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コウチーニョがバルサ移籍で貫いた「信念」。冬にリバプールを去った本当の理由

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

千載一遇のチャンス。リバプールは手を尽くしたが…

コウチーニョ
相思相愛と言われたユルゲン・クロップ監督との関係だったが。リバプールは慰留に手を尽くすも信念の前に及ばず【写真:Getty Images】

 さらに今年の夏はワールドカップがある。本人の頭には残留もよぎったかもしれない。だが結局、自分の信念を貫くことになる。元イングランド代表で現在は解説者のジャーメイン・ジーナスは、昨夏の時点で「もしかしたらこれが最初で最後、千載一遇の機会かもしれない」として「移籍させるべきだ」と話していた。

 実際に、昨夏のバルセロナのターゲットの1人で、オファーも出したニースのジャン・セリには、残念ながら今冬、もしかしたら今夏以降もオファーは届かない可能性が高い。移籍が破談となったのは、ニースが求める金額を変更したからとされている。

 昨年5月の時点でニースのジャン=ピエール・リヴェール会長は「契約には4000万ユーロ(約54億円9での契約解除条項がある」と示唆した。しかし契約書には正式な解除条項がなく、一部報道によると、ニース側が交渉の途中で要求額を5000~6000万ユーロ(約68〜82億円)に変更したために、バルセロナは最終的に手を引いたという話である。

「バルサでプレーしたい」という、幼いころからの夢を奪われ傷心したセリの今季前半の低調ぶりは著しかった。それだけにコウチーニョの場合も、「このタイミングを逃したらいけない」「もしかしたら次の機会はないかもしれない」と本人が考えたのではないだろうか。

 以下は、コウチーニョ移籍後最初の記者会見のユルゲン・クロップ監督のコメントだ。

「もし私が『絶対にダメだ』と言ったら、クラブは『オーケー、残留だ』といったはずだ。だが、その目がないことは明らかだった。(コウチーニョを)出す、出さないについて、私の考えはフィフティー・フィフティーだったが、なんらかの決断を下さなくてはならなかった。結果的には非常に簡単な決断になったがね」

「残留させる意味があるか否か。使えるか使えないか。正直言うと、そのチャンスはゼロだった。彼の中には(夏に続いて)また残るという選択肢がなかったからね。本人から『頭が混乱している』とか、そういった話があったわけではない。話し合いを繰り返し、これ以上引き留めるのが困難であることは明白だった。いろいろなオプションについても話したが、すでに彼の決意は固まっていた。我々はいつか(移籍を)認めなくてはならず、それが今になったというだけ。クラブとして、我々がやれることはすべてやりきった」

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