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Jリーグ 6年前

長崎、ついに到達したJ1。“奇跡”の昇格経て挑むミッションは「弱者だからこそ勝つ」

text by 藤原裕久 photo by Getty Images

ワールドカップまでに「突っ走れるだけ突っ走る」

 では、この順調な仕上がりを見せるチームはいかにJ1を戦うのか。それは高木監督が昨年末から語る「ワールドカップによる中断期間が入る第15節まで、突っ走れるだけ突っ走る」という言葉そのままの「スタートダッシュ」となるだろう。

 ワールドカップによるタイトな連戦が続くスケジュールの中で、各チームの状態が上がってくる前に全力をぶつけて勢いで駆け抜け、ワールドカップの中断期間にリカバリーと更なるチーム強化をはかる……。

 それは言葉にすれば、リーグ戦の戦略プランとしては、余りにシンプルでオーソドックスなものではあるが、そのための準備と策は周到だ。

 昨年末から今季の戦略プランの共有を徹底し、始動以来一貫して開幕スタートダッシュを念頭にしたトレーニングとスケジューリングでチームを強化しただけではない。

 分析スタッフとして貝﨑佳祐テクニカルコーチを招聘して、以前から定評のあるスカウティングの向上を狙い、アウェイゲームで自身が不在の際にも、居残り組が質の高いトレーニングができるよう、前北九州監督で2016年まで長崎に所属していた原田武男コーチを復帰させるなどチーム体制自体の強化にも着手した。

 その上で1月の沖縄キャンプではあえて4バックにも取り組み、将来的に戦いの幅を広げる種も蒔くなど、リーグ最初の15試合を突っ走り、その後につなげていくための準備を開幕まで繰り返し続け、それは今も継続中だ。

 もちろん、こういった準備を整えてもなおJ1が甘くないことは十分に認識している。クラブからは度々、ACL出場を狙う旨の発言こそ出ているが、それは少しでも諦めずに上を狙うという姿勢を表わしたものに過ぎない。

 実際に「まず目の前の試合に全力で臨んでいくだけ」と異口同音に語る選手たちの表情にも奢りや浮かれる様子は見られない。

 あくまで開幕からの15試合で少しでも多くの勝点を積み上げていくこと、その上で「残留」「中位進出」「上位進出」「ACL出場圏内」という風に一つ一つをクリアするために戦うこと、チームの目線はあくまでチャレンジャーのそれである。

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