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極東ロシアクラブを支える“東洋”の医学。世界一過酷でも…選手を惹きつける「家」の一体感

シリーズ:世界一過酷!? 知られざる極東ロシアサッカー text by 舩木渉 photo by Wataru Funaki, Keisuke Goto

予想以上の歓迎。クラブの食堂でまさかの…

SKAハバロフスク
練習取材後には食堂で選手たちと同じ夕食を振舞ってくれた。スープ、サラダ、肉料理、炭水化物と栄養の偏りがないよう配慮が見られる【写真:舩木渉】

 やはりアウェイゲームの困難さは明らかで、さらに初昇格チーム故の戦力不足も相まってSKAは低迷している。現在21試合を終えて勝ち点12しか積み上げられず最下位に沈み、12月末にポドゥブスキー監督は退任せざるをえなくなってしまった。

 後半戦はルビン・カザンやロコモティフ・モスクワを率いた経験を持つリニャト・ビリャレトディノフ新監督(かつてエバートンなどで活躍したディニャル・ビリャレトディノフの実の父でもある)とともに再出発を図る。クラブのレジェンドでもあるポドゥブスキー前監督はスポーツディレクターとして新体制を支えることになった。

 ここで1つ、ナバロフスキがSKAを「家のように」感じていると話したことにつながるエピソードを紹介したい。同行した友人と筆者の2人は練習取材を終えると、アンフィノジェントフ氏に「こちらに来なさい」とスタジアム内のクラブ施設に招き入れられた。内部にはオフィスだけでなくトレーニング用のジムや選手たちのロッカーなど、クラブのあらゆる機能がすべて集約されていた。

 それらを横目に見つつ導かれるままについていくと、扉の先は選手たちが練習後に食事を摂る食堂だった。何もわからないまま混乱していたが、アンフィノジェントフ氏はこちらに構わず席を用意し「ライスとパスタどちらがいい? チキンとビーフはどちらだ? スープと飲み物はあそこから自分で取ってくれ」と言う。

 なんと選手たちと同じ食事を振る舞ってくれたのである。ロシアではその後も何度も同じようなスープを飲んだが、SKAハバロフスクの食堂でいただいたものが最も美味しかった。肉料理の味付けも独特だが風味豊かで食が進む。ごく一般的な家庭料理という雰囲気で、練習を終えてシャワーや着替えを済ませた選手たちも続々とやってきては美味しそうにたいらげて帰っていく。

 突然取材にやってきた見知らぬ日本人に最高のおもてなしを用意し、暖かく迎え入れてくれたことには感謝しかない。そういった来る者拒まずの姿勢が、過酷な環境でも所属選手たちに「家」のような雰囲気を感じさせる要因になっているのかもしれない。

 ロシア人は内向的で、見知らぬ日本人はあまり歓迎されないのではないか…そんな心配は間違いだったと気づかされた。心温かい“おもてなし”を受け、ハバロフスクでの1日目は充実感とともに終わった。

(取材・文:舩木渉)

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【了】

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