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Jリーグ 6年前

名古屋GKランゲラックが示す世界基準のプロフェッショナル。熟練した基礎技術と「準備」の哲学

今季から名古屋グランパスに所属するオーストラリア代表GKミッチ・ランゲラックが、さっそくJリーグで存在感を発揮している。ハイレベルなプレーの数々は日頃の鍛錬の賜物。それらすべての源泉は体に染みついた「基礎」にあった。(取材・文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ウォーミングアップでもわかるレベルの高さ

ミッチ・ランゲラック
名古屋グランパスのゴールを守るミッチ・ランゲラックの存在感は大きい【写真:Getty Images for DAZN】

 去る11日に行われた明治安田生命J1リーグ第3節の試合前、Shonan BMWスタジアム平塚の記者室の脇からピッチ上で行われるGKのウォーミングアップを見ていた。

 視線の先で試合前の最終調整に勤しんでいたのは、今季から名古屋グランパスでプレーしているオーストラリア代表GKのミッチェル・ランゲラックだった。まだウォーミングアップも序盤だったが、思わず「うわ…上手いな」と独り言をつぶやいてしまった。

 ランゲラックはステップを踏みながらGKコーチが正面から蹴るボールをキャッチする、単純な動きを繰り返していた。それを見るだけでも非常にレベルが高い。サイドステップを踏んでも絶対に重心がブレず、腰の高さが変わらない。そのため視線の動きも最小限に抑えられ、向かってくるボールを正確に捉えることでスムーズなキャッチ動作を可能にする。

 キャッチの瞬間も、まるでボールが手の中に吸い寄せられるようなやわらかさが見てとれた。GKコーチが蹴ったボールに対して腕を伸ばすのではなく、フォームを作ってギリギリまで待ち構えて、手に触れた瞬間からボールの力を吸収するように腕を曲げて確実に捕球する。

 何よりも繰り返される一つひとつの動作の再現性が非常に高い。もちろん控えのGK武田洋平も素晴らしい選手であることに疑いはないが、ランゲラックが身につけている基礎技術の習熟度の高さは目を見張るものがあった。

「GKとしてやるべきことは日本でも欧州でもほとんど変わらない。突然何かが起こっても常に反応できるようにしておくこと。どんな日でも、どんなスタイルでも、世界中どのリーグでも、GKとしてゴールを守る仕事、準備しておくことは同じなんだ。

もし相手がシュートを打ってくるとき、それが5mの距離からでも、6m、7m…10m離れていても僕がやることは変わらない。これまで僕がプレーしていたブンデスリーガであろうと、チャンピオンズリーグであろうと、今いる日本であろうと、GKは常に準備していなければいけないことは変わらないし、試合中は毎分毎秒スイッチを入れておかなければならない。それがどこかで変わるとは思わない」

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