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女子サッカーの救世主か。なでしこリーグを無料放送、新興外資系配信企業「mycujoo」の正体

text by 舩木渉 photo by Getty Images, Wataru Funaki, mycujoo

利用は無料。mycujooのビジネスモデルとは

辻翔子
mycujooとなでしこリーグの橋渡しをした辻翔子氏。大学までサッカーをプレーした元選手でFIFAマスターの卒業生でもある【写真:舩木渉】

 自らも早稲田大学ア式蹴球部女子(女子サッカー部)でプレーしていた元選手として、なでしこリーグの現状に危機感を抱いていた。「コンテンツを持っているリーグ自身が主導権を握って、自分たちでコンテンツを作って、配信して、コントロールするのが鍵だと思っています。コンテンツの価値を一番理解しているのはリーグなので」と、辻氏は語る。

「まずは日本の女子サッカーファンと、海外のなでしこリーグのファンが増えてくれれば一番だと思います。リーグとしてもファンを増やしたり、競技人口を増やしたり、mycujooには様々な使い方があります。実際私たちのプラットフォームを通して収益化することもできます。クラブや選手が自分たちの試合を分析したり、海外移籍したい選手は自分の試合の映像のリンクを送って自分を売り込んだり、色々な可能性や使い方があります」

 mycujooの提供しているプラットフォームは世界統一のもので、サッカーだけに特化している。映像にはスコアボードやタイマー、メンバー表などが簡単に挿入できる。また配信者が配信しながら動画にタグ付けすることによって、ゴールなどの印象的な場面に1回のクリックで飛べるような工夫が為されている。

 統一のプラットフォームを利用することで、映像の二次使用を防ぎながらコンテンツホルダーの権利を守り、利用者のデータ収集などを容易かつ正確に行えるようになっている。配信者用のチャンネル開設はクラブやリーグ、サッカー協会単位でしかできないが、視聴者は全てのサービスを無料で利用できる。

 では、どのように収益をあげるのだろうか。mycujooではイングランドのプレミアリーグやスペインのリーガエスパニョーラといった「プレミアムコンテンツ」が配信されているわけではない。それでもパートナーとWin-Winの関係を築けているとモルグリス氏は語る。

「主な収入源は広告です。ビデオ広告やサイト内のスポンサー枠、この2つからの収入がメインになっています。アジアの小さな国などは、視聴者も少ないですし、広告だけでは収益化できないと感じる方も多いでしょう。なので、我々はコミュニティを世界に大きく広げることに力を入れています。複数の国やレベルのコンテンツを合わせたり、女子サッカーのコンテンツをパッケージ化したり、それによって初めてスポンサーも価値を理解してくれます。時間はかかると思いますが、まずはコンテンツを増やして、コミュニティを大きくすれば価値を生み出せると思っています。

また、我々はパートナーに対してレベニューシェア(収益分配)のモデルを提供しています。コンテンツを配信しているパートナーと我々で収益を分配することによって、利益がクラブやリーグに入れば、サッカーの発展にもつながりますし、我々にとってもいいことです」

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