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Jリーグ 6年前

7km走るGK飯倉大樹の頭の中。横浜FMの新戦術を支える“クレイジー”守護神の理想像

text by 舩木渉 photo by Getty Images for DAZN

「自分の中ではオーソドックスなんていうのは不必要なもの」

飯倉大樹
浦和戦の後半アディショナルタイム、飯倉大樹は青木拓矢との1対1を制して横浜FMの勝利を引き寄せた【写真:Getty Images for DAZN】

 2つ目は試合の中で積み上げたいくつもの予測が、新しい判断の材料となり結実した場面。後半アディショナルタイムに浦和のMF青木拓矢との1対1を止め、マリノスの1-0での勝利と今季初の勝ち点3を大きく引き寄せたプレーである。

「最終ラインを抜かれた時点でボンバー(中澤佑二)がもう明らかに追いつけない、フリーで1対1になる。この状況でもしループシュートを打たれたら終わってた。だけどループシュートを打たれなかった時点で俺は止まった。その前にもう減速していると思う。で、下がるフリをして、トラップしたところに寄せるというのはイメージとしてあった。

相手にとってゴールを決めるとしたら、ループシュートが最も大きなチャンス、そうじゃなかったら角度的に寄せれば8割〜9割は止められると思った。青木もその前にロングシュートを一度外しているし、時間的にも確実にいきたかった部分はあったと思う。バウンドした瞬間にボールがちょうど足もとに入っちゃって、その時にはシュート打てないから、勝算はあった」

 ロングボールなどで一気に最終ラインの裏を突かれる形は、マリノスとしても予測できている。無闇に最終ラインを下げず、中澤を中心にオフサイドを積極的に取りにいく姿勢がチーム全体に共有されていたことも飯倉の「予測」の材料となった。

 また、青木は79分にハーフウェーライン付近からロングシュートを打って惜しくも外していた。その経験と終盤の重要な時間帯から、リスクを冒しにくい状況にあることも飯倉は読んでいたのである。

 リーグ開幕直後までは最終ラインとの距離感や、カバーのタイミングなどを見誤るような場面も見られたが、それも試合を重ねるごとに減ってきた。松永GKコーチは「大樹はプレースタイル的にはすごく合う戦術だと思っている。あいつもそれに関してはすごくやりがいを感じている」と語ったが、飯倉本人もポステコグルー監督からの要求に喜びを感じているのは間違いない。

「俺にとってはすごく前向きで、ポジティブなこと。実際ほとんどのGKが後ろでゴールを守るスタイルで、それがオーソドックスなのかもしれないけれど、自分の中ではオーソドックスなんていうのは不必要なもの。こういう守り方ができるならば、俺は絶対こちらの方が得だと思うし、わざわざ自陣のゴールに寄ってきてファインセーブするよりも、高い位置でボールを奪えた方がカウンターのチャンスもあるし、そういう意味ですごく俺に適したサッカー。求められているものは高いけれど、やりがいがある」

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