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マルセロはウイングにもボランチにもなる。戦術の鍵を握る天才的サイドバック【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

天才は左利き

 左サイドバックが左利きであるべきなのと同じ理屈で、右サイドバックは右利きが望ましい。ただ、こちらがそれほど「右利きであるべき」と言われないのは、世の中には圧倒的に右利きのほうが多いからだ。古今東西、およそ左利きの割合は10人に1人だという。右サイドバックはとくに「右利き」と言わなくてもたいてい右利きなのだ。

 ところが、左サイドバックはそうではない。イタリアの名レフトバックだったパオロ・マルディニは右利きだった。左足も使える両足利きなのだが左利きではない。日本代表の歴代左サイドバックもほとんど右利き。都並敏史、相馬直樹、長友佑都は左利きにみえるがいずれも右利き。例外として三都主アレサンドロがいるが、彼はブラジル人である。左サイドバックが左利きでないのは珍しくなく、むしろ必ずレフティのいるブラジルのほうが例外といえるかもしれない。

 俗に左利きには天才が多いと言われるが、少なくともサッカーに関して正しいようだ。例えば偉大な選手を10人あげるとして、おそらくリオネル・メッシ、ディエゴ・マラドーナ、フェレンツ・プスカシュの3人は確実に入るだろう。ボビー・チャールトンも入るかもしれない。もうこれだけで左利きの人口比を大きく超えているわけだ。

 ブラジルの左サイドバックはレフティで天才的で、陽性のサッカーを象徴している。マルセロはまさにその系譜にある。

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