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日本代表 6年前

“エリートの呪縛”を解いた宇佐美貴史。W杯で輝くために…手に入れた新たな顔【日本代表当落線上の男たち】

シリーズ:日本代表当落線上の男たち text by 元川悦子 photo by Getty Images

パフォーマンス向上のための食事とトレーニング改革

 ロシアワールドカップ最終予選後の昨年10月に行われたニュージーランド戦(豊田)とハイチ(横浜)戦、同11月のブラジル戦(リール)とベルギー戦(ブルージュ)も代表に呼ばれず、ロシア行きの可能性はかなり低下したと見られたが、本人は地道な努力を続けていた。「ピッチ内のところではサッカーのみですし、ピッチ外のところでは家族や子供だけ。その2本柱で集中してます」と語り、オフ・ザ・ボールの動きや守備の課題克服に取り組んだ。

 フンケル監督は「宇佐美はある程度のところで満足してしまう傾向がある」と現地メディアに語ったというが、幼い頃からエリート街道を歩んできた天才肌の選手はしばしばそういう状況に陥りがちだ。その問題点を突きつけられた彼は、かつてないほどストイックに自分を追い込もうとしたようだ。

 パフォーマンスを劇的に向上させるためには、まず走れてキレのある体を手に入れなければならない。そこで宇佐美は肉体改造や食生活の改善にも着手。体重を2~3kg落とし、トレーニングにも工夫を凝らした。

「食生活の面は、冬のオフ期間に一時帰国した時に、食事を摂るタイミングや摂り方をアスリートに教えている先生に話を聞いて学ぶ機会がありました。油ものや消化を邪魔するものは一切摂らないというのがいい感じではまって、体が絞れましたね。

 フィジカル強化もずっと続けていましたけど、2月に10日間ほどトレーナーさんにドイツに来てもらって、体のキレや鋭さを出す練習を積み重ねたんです。『3月の代表2連戦に呼ばれなかったらロシア行きが相当厳しくなる』と考えて、そのタイミングで勝負を賭けました。結果、すごく走れるようになった。以前は後半の頭とかに『足重いな』と感じることは多かったけど、今は全くないし、むしろ終盤にどんどんギアを上げられるような感覚がある」と自信を口にする。

 その象徴が3月11日のデュイスブルク戦で88分に挙げた決勝点。「終盤に強い宇佐美」という新たな顔が見えてきているのだ。

 マリ戦は先発するも60分で退き、ウクライナ戦もラスト3分というタイミングで投入されたため、日本代表の宇佐美が本当に90分間通してダイナミックなランニングを続けられるのか否かは分からなかったが、西野朗新監督もハードワークは確実に要求するはず。以前の宇佐美はジョーカー枠の1人という位置づけだったが、中島が一気に頭角を現し、その枠をさらおうとしているため、宇佐美が生き残ろうと思うなら、先発の座を勝ち取るしかないのだ。

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