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日本代表 6年前

中島翔哉は最も「ポリバレント」な選手だった。日本代表選外、西野監督の基準への違和感

text by 舩木渉 photo by Getty Images

実は「ポリバレント」だったポルトガルでの中島翔哉

中島翔哉
ポジションにとらわれず与えられた複数のタスクを柔軟にこなす。中島翔哉は最も「ポリバレント」な選手だった【写真:Getty Images】

 では、本当に中島は「ポリバレント」ではなかったのか。ポンテ氏が「4つの違うポジションでプレーしていた」というように、複数の役割を柔軟にこなしていたのではないだろうか。

 それを示すデータもある。中島は今季のポルトガル1部リーグで29試合に出場し、その全てで先発メンバーに名を連ねた。基本的には[4-1-4-1]あるいは[4-3-3]の左ウィングでの先発出場だったが、2トップの一角で起用されたこともあった。

 リーグ最終節のパソス・フェレイラ戦。トップで先発出場した背番号23の小柄なアタッカーは、少し下がり目の位置から絶妙なスルーパスを通して先制点を演出すると、ポルティモネンセが挙げた全得点に絡む活躍を披露した。中島のシュートのこぼれ球が2点目につながり、中央に走り込んで右サイドの味方からのパスを受け、ワンタッチで左に流したプレーが3点目を生んだ。最終的にポルティモネンセは3-1で勝利を収めた。

 今季の中島は29試合中21試合がフル出場だったが、そのような試合の多くでは他のポジションの選手交代にともなって、左ウィングから2トップの一角やトップ下、右ウィングに移った。試合ごとに違う戦術の中でも、監督の信頼を得てピッチに立ち続け、ポンテ氏の言うような「4つのポジション」以上に多くの役割を果たしていたとも言える。

 言わずもがな、中島は「ポリバレント」だったのだ。西野監督は「私が(代表選手の)リストを作る段階で(ピッチ状の)ボードの上に(スタート)ポジションを載せたことは一度もありません」と述べていたが、この言葉が真実なら、もともとハリルホジッチ前監督が起用を想定していた左ウィング以外に中島がうまくハマる場所があるかどうかすら検討されなかったのかもしれない。

 そもそも「ポリバレント」という言葉の意味が再検証されなければいけない時期にきていることにも触れておきたい。オシム元監督は「ポリバレント」を「複数のポジションをこなす」という解釈で用いたが、これは10年以上前のことだ。

 それからサッカーは急激な進歩を遂げ、いまや「フォーメーション」や「ポジション」というのは単に形式的なものであって、ピッチ状の事象において意味を持たなくなってきている。便宜的に選手の大まかな立ち位置という意味での「フォーメーション」や「ポジション」は存在するが、それよりも選手個々の能力に応じて与えられている「タスク」の方が重要な意味を持つ。

 中島も左ウィングという「ポジション」がメインだったのは間違いないが、与えられる「タスク」は試合によって異なる。多岐にわたる「タスク」を柔軟にこなしてゴールやアシストという結果を残していることも、ある意味で「ポリバレント」と言えるのではないだろうか。

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