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Jリーグ 6年前

『イニエスタッソ!と叫びたい』。世界最高のMFは何をもたらすのか? 名実況が語る期待感【倉敷保雄の声】

text by 倉敷保雄 photo by Getty Images,Editors

数々の名勝負を実況。最も印象的だったのは…

 ほんの1時間ほど前にピッチ上でため息がでる正確無比な高速パスを連発していたクラックはオーダーをまとめ、ニコニコと笑い、他愛ない家族の会話の聞き役を務めていた。穏やかそうな笑顔と自然な振る舞いに人となりが感じられた気がした。そして僕らはいそいで彼の目に入らないようカメラを仕舞い込み、ただ隣で食事ができる幸運な時間を喜んだのだった。

 イニエスタが出場した試合を担当することは多かったが、チェルシーと戦った2009年のチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグがもっとも印象的だ。カンプノウでのファーストレグが0-0で、チェルシーがスタンフォードブリッジで先制して迎えた後半アディショナルタイム。イニエスタがゴールを奪い、アグリゲートスコア1-1、アウェイゴールの差でバルサが決勝へ勝ち上がった。(そしてバルサが優勝した)

 チェルシーの鉄壁の守りが素晴らしく、90分を過ぎても枠内シュートすら飛ばすことのできなかったバルサが土壇場で試合を決めた。ハイプレッシャーの中でツェフから奪ったイニエスタのゴラッソ(スーパーゴール)は“イニエスタッソ”と呼ばれ、翌日の新聞の一面を飾る見出しとなった。

 神戸にやって来るイニエスタはワールドカップロシア大会に臨み、それから日本でプレーするわけだが、Jでのデビューはいつだろう。スペインは決勝まで進む可能性があるし、休養を取る必要もある。日本の高温多湿の夏にイニエスタも手を焼くのかな。ダブルタッチを真似する子供たちは増えるだろうな。

 ああ、イニエスタとJリーグのあれこれを想像しているだけで楽しい。神戸とJリーグにこれからどんな刺激をもたらしてくれるのだろう。イニエスタが加入してすぐ起きる変化に対応できるのは、彼に近いレベルの技術を持った選手、ビジョンやアイデアを分かち合える選手だけだ。誰がそのレベルにあるのか、Jの選手全員に自分の立ち位置を比較できる機会が訪れるわけだ。

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