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西野Jも屈したフェライニの高さ。日本が持つコンプレックス、解決策の1つとは【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

フェライニとフリーデンライヒ

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フランスやベルギーは努力やトレーニングによって身体能力を開発したのではなく、大半は遺伝子のおかげなのだ【写真:Getty Images】

 フランス代表の黒人選手がFWに起用されるようになったのはレイモン・ドメネクやジェラール・ウリエが育成において意図的にそうしたからで、それまではもっぱらDFだった。今はベルギー代表のコーチを務めるティエリ・アンリあたりから始まったにすぎない。

 サッカーと国民性は密接な関係にあるけれども、人種の多様化によって新しい文化と新しい身体能力は加えられていて、常に変化をしている。フランスやベルギーは努力やトレーニングによって身体能力を開発したのではなく、大半は遺伝子のおかげなのだ。

 最も早くその恩恵を受けたブラジルでは、アルトゥール・フリーデンライヒが有色人種のスーパースター第一号だった。生涯1000得点を超えるフリーデンライヒは名前から想像されるとおり半分はドイツ人だが、半分はアフリカがルーツ。当時、ブラジルでは白人しかプレーできなかったが、半分白人だったので許されていた。それでも差別や無用なファウルから身を守るために、フリーデンライヒは頭にネットをかぶり、ときには粉を塗って顔を白くみせていた。

 現在のベルギー人はフェライニのアフロへアのカツラを被って応援する。日本サッカーをどう強くするか考えるとき、現在の環境や文化という枠組にこだわりすぎないほうがいいと思う。物事は変化する。高さも速さも、意外と簡単に何の努力もせずに手にするかもしれないのだ。フランス、ベルギー、ポルトガル、最近のイングランドもそうだったように。

(文:西部謙司)

【了】

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