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日本代表 6年前

森保“兼任”監督は成立するのか。唯一の前例・トルシエ時代との明確な違い。成功への道筋は?

text by 元川悦子 photo by Kenzaburo Matsuoka, Getty Images

トルシエ時代にも困難はあった

トルシエ
フィリップ・トルシエ氏はA代表と五輪代表の両方を率いた兼任監督の唯一の前例だ【写真:Getty Images】

 ただ、シドニー五輪予選の期間には、多少なりとも問題が起きた。1つは柳沢敦が合宿中に抜け出す規律違反を起こしてチームを外されたこと。これは山本体制の落ち度という見方もあった。もう1つはフィリピン戦で小野伸二が左ひざじん帯断裂の重傷を負うというアクシデントに見舞われたこと。小野に関しては「スタメンを入れ替えていたらこうした事故は起こらなかった。トルシエがいれば防げたのではないか」といった批判の声も出た。

 もちろん先発決定は両者の中で話し合いがなされていたのだろうが、指揮官不在だと不穏な空気が流れやすいもの。森保監督もどちらかの代表を空ける可能性が出てくるため、多少の批判にさらされる覚悟を持ちながら、マイナスな影響を最小限にとどめる努力が求められる。そのためにも、やはり優秀なスタッフを彼の下に置くことが重要だ。

 トルシエ時代も振り返ってみれば、日程的にタイトな時は少なくなかった。2つのチームが始動した1998年秋は、10月にA代表のエジプト戦、11月に五輪代表のアルゼンチン戦があり、12月には五輪代表がタイでアジア大会出場と毎月のようにスケジュールが入っていた。

 1999年になるとトルシエ氏がU-20代表監督も兼務するようになり、4月のワールドユースまではほぼそちらにかかりきりになったが、3月にA代表のブラジル戦なども合間に入っていたため、要所で効率よく職務をこなしていた印象はある。

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