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覚醒に完全復活、その一方で…。新生チェルシーを分析。不満残る補強も、そのスタートは?【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

最大の敵は内部に?

 辛抱できないオーナー

 さて、サッリはナポリを率いていた当時、メンバーを固定していた。当然、チェルシーでも同じ手法で臨む公算が大きい。したがって、ハダースフィールド戦とアーセナル戦のメンバーが今シーズンの主力、と考えていいだろう。フィード能力や戦術理解度が新指揮官の求めるレベルに達していないダニー・ドリンクウォーター、ガリー・ケイヒルはおそらく構想外だ。

 また、セスク・ファブレガスも厳しい。攻守の切り替えが遅く、昨シーズンは彼の背後を狙われるケースも頻繁に見られた。現在、膝の故障で戦列を離れているが、中盤インサイドでの序列は低く、トップで起用するには高さもスピードも足りない。

 豊富な運動量を必要とするサッリのスタイルを追求するには、ひとりでも多くの選手が必要だ。しかし、みずからの意に添わない者を使うような妥協は、チームを勝利から遠ざけるだけだ。ましてプレミアリーグとセリエAはレベルが違う。

 完成度こそシティ、リバプール、トッテナムに及ばないものの、就任後およそ一ヶ月にしては、チェルシーはよくまとまっている。5~6年も継続性を欠いているユナイテッドに比べれば、ゲームの質もなかなか高い。

 スタートは、とりあえず好感触──。ただし、アブラモビッチ・オーナーは辛抱強くない。暫定体制を含め、16年で14人もの監督の首を挿げ替えてきた。この厄介者の存在だけは、サッリも頭の片隅に入れておいた方がいい。

(文:粕谷秀樹)

【了】

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