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日本代表 6年前

森保一という監督。U21日本代表から引き出した「対応力」と「反発心」。確実に成長へと導く力

text by 元川悦子 photo by Getty Images

勝負かかる重要な一戦でテストを盛り込む

 後半に入るとサウジは一気にギアを上げる。両サイドバックとサイドアタッカーに高い位置を取らせ、リスクを冒して攻めてきた。そこで指揮官は早めの交代に打って出る。J1で実績を残しながら出番の少なかった遠藤渓太、今大会精彩を欠いていた三好康児を立て続けに投入。彼らが漂いかけていた停滞感を打破し、相手の勢いを封じる。

 そして残り15分を切ったところで遠藤のサイドチェンジを左で受けた前田がドリブルでエリア内に侵入。マイナスクロスを受けた岩崎が値千金の決勝弾を奪い、今大会ベストな内容で4強入りを果たしたのだ。

 準備期間なしでインドネシア入りしたこともあり、ここまでの日本の戦いぶりは芳しいものとは言えなかった。1次リーグは2戦目のパキスタン戦こそ大量4得点を奪ったものの、1戦目のネパール戦は消極的な戦い方が目立ち、3戦目のベトナム戦は入りのミスと球際の課題を露呈し黒星を喫した。

 そこから中4日で立て直しを図ってマレーシア戦に挑んだが、ベタ引きの相手を崩しきれず不完全燃焼感の濃い内容に終始した。途中出場の大学生FW上田綺世のPK奪取で辛勝したものの、2年後の東京五輪に向けて暗雲が立ち込める戦いぶりと言わざるを得なかった。

 それでも森保監督は選手たちの一挙手一投足をじっと見守り、彼らの「対応力」や「判断力」を伸ばそうと仕向けていた。

「マレーシア戦は(5バックの)相手とミスマッチになる4枚のDFで行くことも考えたが、あえて(3-4-2-1布陣で)マッチアップする選手がどういう選択をするか見たかった」と勝負のかかった重要決戦でテスト的な要素を盛り込んでいたのだ。

 首尾よくその修羅場を潜り抜け、迎えた今回は「システム的なミスマッチが起こる中、相手のウイークポイントをどう消していくか」という新たなテーマ設定をした。4-3-3のサウジと3-4-2-1の日本だと、1トップのカマラは3バックが人数をかけて守れるが、中盤は数的不利になりがちだ。前線も1トップ2シャドウが相手4バックをうまく攻略しなければゴールは奪えない。

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