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日本代表 6年前

森保一という監督。U21日本代表から引き出した「対応力」と「反発心」。確実に成長へと導く力

text by 元川悦子 photo by Getty Images

若者の自覚を促す「確固たる信念」

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前田大然【写真:Getty Images】

 そんな長所短所を踏まえながら、相手と駆け引きして優位に立たなければ、勝負には勝てない。「難しい状況下で臨機応変さを発揮してほしい」という森保監督のメッセージを選手が確実に呼応。若き日本はマレーシア戦の低評価を覆す「反発力」を発揮し、サウジという強敵を撃破したのである。

「攻撃の部分では速攻に行ける時は行く、ボールを握りながらミスマッチのところを突いていくという選択肢を選手たちが持ちながらうまくプレーしてくれた」と指揮官も試合後、満足そうな表情を見せた。

 実際、この日は立田が屈強なフィジカルを備えた相手FWと対峙しても十分やれるところを示したし、2得点の岩崎、2アシストの前田の動きも光った。岩崎の先制点の起点を作った杉岡のいぶし銀の仕事ぶりも光った。前回の「A代表昇格可能性のある選手はゼロ」という印象を払拭しつつある人間が何人か出てきたのは、確かにポジティブな要素と言っていい。

 このような成長が見られるのも、選手の自覚を促し、自己判断力や対応力を養わせる「森保流アプローチ」によるところが大だ。

「森保さんは基本的な規則はあるけど、『あとは自分で考えながらやれ』ってスタイル。山雅のソリ(反町康治監督)さんは細かい人なんで、それはチームではないこと。いい勉強になってます」と前田は語っていたが、内面に働きかけるやり方は時間がかかる。活動時間が短い代表では、むしろ反町監督のように約束事を細かく決めて徹底させた方が即効性が出る可能性が高い。

 にもかかわらず、森保監督は意識改革を重んじる。東京五輪世代を大きく飛躍させるためにはメンタル面を含めた人間力が必要なんだという「確固たる信念」を持ち合わせているからだろう。

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