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久保建英とメッシは似ていない。あえて挙げるなら…。今こそ知るべき特別な才能と発展途上の現在【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

才能と経験

 AFC U-19チャンピオンシップ、U-19日本代表は3戦全勝でグループリーグを突破し、準々決勝では地元インドネシアを破ってU-20ワールドカップ出場権を手にした。影山雅永監督が言っていた「最低限の目標」はクリアしたことになる。

 今回のU-19代表は良い選手が揃っている。才能があるだけでなく、この年代にしては経験値の高いチームだ。点差や時間帯、状況を考えてプレーする意識がある。すでにJリーグでプレーしている選手が何人もいるからだろう。橋岡大樹(浦和レッズ)、齊藤未月(湘南ベルマーレ)、安部裕葵(鹿島アントラーズ)と各ラインに試合を読めて味方をリードできる選手もいる。

 本来、試合運びに大人も子供もない。サッカーはサッカーであって、10歳の子供でも駆け引きのできる選手はいる。ただ、この年代はサッカーを「習い事」として始めたであろう選手たちだ。道路や公園や路地裏でサッカー選手が育まれる時代は終わっている。それは日本だけでなくヨーロッパやアジアでも同様で、一部の国や地域を除いてはそうなっているが、日本は同調圧力が強いせいか、個人で試合の流れを読んで何かを変えたり、仲間にそれを要求することがあまり得意ではない。「経験が足りない」「マリーシアがない」などと言われ続けてきたわけだ。

 U-19代表は、その点で大人びたプレーができるチームである。すでにプロとしてJリーグに出ている選手が何人もいるのだからそれも当然かもしれない。ただし、選手間で多少のバラつきはある。

 インドネシア戦では久保を含む前線の選手だけでハイプレスをかける場面が終盤にあった。残り時間わずかで2-0、インドネシアがロングボールを打ち込んでくるのは明白なので、自由に蹴らせたくなかったのは理解できる。しかし、突っ込んでは外されるケースが相次いでいた。あれでは元も子もない。久保に技術とアイデアがあるのは間違いなく、才能ではこのチームでも貴重な存在だ。ただし、経験という面では足りないところもあり、要はまだ完成していない。

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