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Jリーグ 5年前

神戸はバルサ化できるか――その問い自体が間違い。まず持つべき「我々の生き方」という信念【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

バルセロナの品格

 バルセロナはサッカー界最高のブランドだ。その歴史、栄光、クオリティのどれをとっても憧れのブランドクラブである。何よりも「哲学」が明確。哲学というと小難しいが、要は「どんなサッカーをやりたいのか」がはっきりしている。それが他と一線を画する品格をもたらしているといっていい。

 何でもいいから勝てばいい、という考え方をしていない。もちろんバルサも勝つためにプレーしているのだが、どうプレーするかのほうが大きな問題になっている。ヨハン・クライフ監督の右腕、長年あらゆる形でバルサを支えてきたカルレス・レシャックにバルサの哲学について聞いたことがある。レシャックが最初に話したのは「負けること」についてだった。

「我々のやり方で70%程度ボールを支配できれば、80%の試合には勝てる」

 バルサの根底にある教義だが、レシャックは「20%は負ける」ということから話し始めた。すべてが上手くいっても負けることはある、サッカーはそういう不条理なスポーツであり、それを認めることがすべての前提になっていると。

 つまり、バルサは100%勝てるチームなど目指していない。当然、負けることもある。それも受け入れたうえで、ではどうすべきか。必ず死ぬことをわかったうえで、ではどう生きるかというのと同じかもしれない。自分たちが勝つ確率が高いと信じる方法に賭ける、それが通用しなければ負ける。外野からは、ああしたほうが良かった、こうすれば勝てた、と言われるかもしれない。だが、それはもう関係ないのだ。生き方の問題だから。

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